[大蔵弁護士による米国ビザ情報] 留学生の不法滞在 新解釈に差止命令
2019年5月3日にノースカロライナの連邦地方裁判所は、2018年に移民局が発表した学生ビザ保持者の不法滞在に関する新しい解釈に対して、暫定的差止命令を下しました。
通常のビザ保持者は、I-94に書かれた滞在期間を超えて滞在するとオーバーステイとみなされます。オーバーステイが180日超えると3年間アメリカへの入国禁止となり、不法滞在が365日を超えると10年間アメリカへ入国禁止となります。ところが、F学生ビザ、 J交換訪問者ビザ、M職業学生などのビザ保持者のI-94とパスポートには特定の滞在期間ではなく、 “D/S”と記載されています。D/SとはDuration of Stayのことで、入学に必要なI-20やDS2019に書かれてある期間まで滞在が有効であるということです。今まで移民局は、これら学生ビザ保持者は、滞在期間を超えて滞在してもすぐにはオーバーステイ扱いにはならず、裁判所から退去命令が届いたり、或いは移民局が滞在資格を却下して初めてオーバーステイが始まるという解釈をしていました。ところが、2018年度の政府の新しい解釈により、F、J、M学生ビザ保持者もI-20やDS2019に書かれてある滞在期間を超えて滞在した場合はオーバーステイ扱いとなり、オーバーステイが180日或は一年を超えている場合、一旦国外に出ると3/10年入国禁止の対象となりました。
また、滞在期間を超えて滞在した場合以外にも、滞在資格に違反があった場合もその時点からオーバーステイがカウントされるようになりました。例えば、学校の授業に参加しなくなったり、就労許可なくして就労をしたり、或いはOPT期間を一日でも超えて仕事をしたりした場合なども、滞在資格違反としてオーバーステイのカウントが始まるようになりました。
これに対し、米国教員連盟と個人の原告二人が政府に対し、昨年度の移民局の法律に対する新しい解釈は、立法の手続きを踏まなかったこと、さらに、現法の移民国籍法に相反するという理由で、訴えを起こしました。これに対し、ノースカロライナの連邦地裁は、最終判決が出るまでの間は、政府の解釈の施行を一時的に差止めするように命令しました。この暫定的差止命令が有効な間は、学生のオーバーステイに関する法律に対する政府の新しい解釈は適用されません。恐らく6月くらいには最終判決が出るのではないかと思われますが、後に政府の解釈は妥当であると判断される可能性も秘めているため、この間国外への旅行は控えた方が無難だと思われます。ただ、個々の事情は異なるので、滞在資格の違反が考えられる場合は専門の弁護士に相談したほうがよいでしょう。
執筆者について
このコラムは、Taylor English Duma法律事務所の大蔵昌枝弁護士によって執筆されています。大蔵弁護士へのお問い合せは下記の情報を参照下さい。
1600 Parkwood Circle, Suite 200
Atlanta, GA 30339
Phone: 678-426-4641
E-mail: mokura@taylorenglish.com
本ニュース記事に関する注意事項 (DISCLAIMER)
本雇用・労働・移民法ニュース記事は弁護士として法律上または専門的なアドバイスの提供を意図したものではなく、一般的情報の提供を目的とするものです。また、記載されている情報に関しては、できるだけ正確なものにする努力をしておりますが、正確さについての保証はできません。しかも、法律や政府の方針は頻繁に変更するものであるため、実際の法律問題の処理に当っては、必ず専門の弁護士もしくは専門家の意見を求めて下さい。アイアイアイキャリア、Taylor English Duma法律事務所および筆者はこの記事に含まれる情報を現実の問題に適用することによって生じる結果や損失に関して何ら責任も負うことは出来ませんのであらかじめご承知おき下さい。