[大蔵弁護士による米国ビザ情報] 公的扶助規定適用再開
2020年9月11日、米国連邦第2巡回控訴裁判所は、コロナウイルス蔓延による国家緊急事態の中、7月29日より一時的に施行が差し止めになっていた公的扶助規定の適用を再開してよいという判決を下しました。これにより、国土安全保障省 (DHS) は、今後ニューヨーク、コネチカット、バーモントを含み全国的に公的扶助規定の適用を再開します。
この公的扶助の規定は2019年8月14日に国土安全保障省により定められ、亡命者・難民・家庭内暴力や人身販売の被害者等一部の例外を除き、一般に外国人の入国や永住権申請時に、将来アメリカ政府の公的扶助対象になる可能性があるかを調べる規定です。各申請フォームにも公的扶助に関する質問項目が設けられ、今まで受給した公的扶助プログラムの情報を開示しなければならないものです。収入を補う現金補助が主な対象ですが、連邦政府補助によるMedicaid (21歳未満や妊婦を除く)、補助的栄養支援プログラム、Section 8 プログラムによる住宅補助金、連邦政府による住宅補助等のプログラムも対象となります。ただし、緊急時の公的扶助の受給等の例外項目も設けられています。この規定に対し、現在でも複数の連邦訴訟で異議が唱えられています。
この判決により、2020年2月24日以降に移民局に提出された請願書や申請書がこの規定が適用されます。差止命令が発令された7月29日から差止解除の9月22日までの間に既に承認された請願書や申請書類の再審査は行われませんが、提出書類がまだ承認されていない場合は、移民局から追加証拠の要請 (RFE) が発行され、公的扶助に関する書類の提出を求められることになります。
具体的には、永住権を申請する場合、永住権申請書類 (I-485) と共に自給自足宣言のI-944フォーム と関連書類の提出が義務付けられますが、10月12日まで猶予期間が与えられます。10月13日以前に提出した請願書や申請書類にI-944フォーム と関連書類が添付されていなければ、後から追加証拠の要請 (RFE) が発行され、これら書類の提出を求められます。10月13日以降にI-944フォーム と関連書類が添付されていなければ、申請は却下されます。自給自足宣誓フォームには申請者と家族の収入、資産、負債、クレジットスコア、健康保険、教育、スキル、外国語、雇用などの情報開示が義務付けられます。これら情報をもとに、将来のいかなる時点においても、36ヵ月の間に合計で12ヵ月以上特定の公的扶助を受ける可能性があるかを審査されます。
短期就労ビザを申請する場合、本人の就労に関する請願書 (I-129) と家族の延長申請 (I-539/I-539A) に所定情報が含まれていなければ、後から追加証拠の要請 (RFE) で証拠の提出を要請されます。短期就労ビザの場合は永住申請ほどの書類は求められませんが、申請書類には様々な公的扶助プログラムを受給の有無に関する質問が盛り込まれており、過去に受給した補助プログラムに関する情報の開示を求められています。
各国の米国大使館や米国領事館でビザを申請する場合は、法的扶助規定の適用は現時点では再開しませんが、申請前に必ず申請国の米国大使館や米国領事館のウエブサイト情報を確認したほうがよいでしょう。なお、公的扶助規定で要請される書類はかなりの量があり、中には国外から取り寄せる書類も含まれているので、申請者は時間に余裕をもって書類の準備をされることを心掛けたほうがよいでしょう。
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