[大蔵弁護士による米国ビザ情報] 国際投資家仮入国許可プログラム
バイデン政権は、外国人のアメリカ国内での起業、ビジネス拡大を促進するために、国際起業家仮入国プログラムを施行しました。このプログラムは2017年にオバマ政権により作られましたが、トランプ政権時には休眠状態でした。バイデン政権発足に伴い、アメリカ国内の雇用促進を助長する目的で、このプログラムが復活しました。この規定により、既存の起業に伴う就労ビザや移民ビザの条件を満たさない外国人起業家もアメリカに滞在しながら起業活動を行うことができるようになりました。
申請者は、アメリカ国内での多額の資金調達、事業の急速成長と雇用創出の可能性があることを証明すれば、最長5年間アメリカに滞在し起業活動を行うために仮入国許可証を申請することができます。新規事業一社に対し、最大で3人まで仮入国許可を申請することができます。
【申請資格】 外国人起業家は仮入国許可を申請するためには以下の条件を満たさなければなりません。
- 申請者は、仮入国許可申請前5年以内に米国に新規事業を設立している。
- 申請者は、新規事業の最低10%を所有している。
- 申請者は、単なる投資家ではなく、積極的事業運営を行い、中心的な役割を果たしている。
- 新規事業がアメリカに多大な公益をもたらす証拠として、以下のいずれかを満たす必要がある。
- (1) 投資家による多額投資。一定条件を満たすアメリカの投資家から過去18カ月間に最低25万ドルの資本投資を受けている。投資家は、過去5年間に以下の条件を満たしていることが条件。
- 各投資家は過去に新規事業へ最低60万ドルの資金投資を行っている。新規事業は株式会社、LLC、その他連邦法や州法に基づく形態が対象となるが、起業家本人やその家族からの投資金、或は、起業家本人やその家族が所有する企業や団体からの投資は対象とはならない。
- 投資先の最低2社は (a) 5人の米国労働者の雇用創出、或は (b) 20%の成長率で年間50万ドルの収益達成。尚、雇用創出はフルタイムの雇用を指し、投資者本人やその家族、請負業者は対象とはならない。
- (2) 政府資金。一定条件を満たすアメリカの連邦政府、州政府、または地方自治体から最低10万ドルの経済開発やR&Dの助成金受領、或は雇用創出に対し賞金を受領した。尚、契約に基づく資金提供は該当しない。
- (3) その他証拠。資金調達条件を部分的にしか満たさない場合、新規事業が急速成長し雇用創出を行う可能性がある強力な証拠を提出しなければならない。例えば、政府機関、投資家、業界団体からの推薦状、事業に関する報道、特許、教育資格、または企業の財務記録などを通して、定評のある新規起業支援団体の支援を受けている、或は、新規技術開発や最先端技術の研究を行っている証拠など。
- (1) 投資家による多額投資。一定条件を満たすアメリカの投資家から過去18カ月間に最低25万ドルの資本投資を受けている。投資家は、過去5年間に以下の条件を満たしていることが条件。
【滞在期間】 申請が承認されれば、初回は30カ月まで仮入国が認められます。ただし、この仮入国許可証を使って、申請した新規事業以外で働くことはできません。扶養家族は本人と同じ期間滞在を許され、配偶者は就労許可証を申請することができます。
滞在期間をさらに30カ月間延長するためには、以下を証明しなければなりません。
- 事業は継続的に運営されている。
- 起業家は最低5%の所有権を保持し、事業経営に必要な知識、技術や経験を使って、事業経営の中心的な役割を果たしている。
- 新規事業に (1) 最低5人の雇用を創出、(2) 一定条件を満たす資金投資や政府の助成金や賞金を最低50万ドル受領、(3) 最初の仮入国期間中に、アメリカで最低50万ドルの収益を上げ、平均で年間20%の成長を達成、或は、(4) 投資、雇用創出、急速成長などの条件を部分的にしか満たさない場合、新規事業の急速成長や雇用創出の可能性がある強力な証拠を提出する必要があります。
尚、新規事業が運営を停止、或は、アメリカの公益に貢献しなくなった場合、アメリカ政府はその裁量に応じて仮入国許可を取り消すことができるので注意が必要です。
【問題点】 現行のプログラムは他のビザ種類とは異なり、一時的に入国が許されている仮入国許可という位置付けになっているため、起業家に永住権を申請できるオプションが与えられていません。国際起業家は、滞在資格を永住権申請ができる別のビザカテゴリーに変更しない限りは、永住権を申請することができないのが欠点です。この点については、各団体が政府と交渉を続けているので、今後変更が加えられるか、見守る必要があります。
執筆者について
このコラムは、Taylor English Duma法律事務所の大蔵昌枝弁護士によって執筆されています。大蔵弁護士へのお問い合せは下記の情報を参照下さい。
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