[大蔵弁護士による米国ビザ情報] 特急申請適用範囲拡大
3月29日に移民局は各種移民申請書類の審査時間の大幅な遅れを解消するために、特急申請の適用範囲を広げる方針を発表しました。トランプ政権時に移民審査の厳密化を目指した方針が数多く発表されたために、移民局の審査時間に大幅な遅れがでました。その後、新型コロナの影響により、既に滞っていた審査時間にさらに拍車がかかり、永住権や特急申請を利用できない就労許可書や旅行許可書の申請、さらに学生ビザ滞在資格への変更や延長、家族の滞在資格の延長の審査に大幅な遅れがでています。
このような状況を改善するために、2022年5月31日以降は、特急申請の適用範囲が徐々に拡大される予定です。2022年には学生ビザへの滞在資格変更申請 (I-539)、学生ビザや J1 交換ビザ保持者の就労許可書申請 (I-765)、さらに雇用主スポンサー移民申請 (I-140) の国際管理職枠と国益免除枠の特急申請を段階的に実施する予定です。その後2025年までの3年間にわたって、短期就労ビザの配偶者の滞在資格延長申請 (I-539)、その他の滞在資格保持者の就労許可書申請 (I-765) にも特急申請を段階を追って適用していく予定です。
それぞれの申請カテゴリーによって特急申請料金と審査時間が異なります。今のところ、下記のように予定されていますが、申請時には変更がないか必ず移民局のウェブサイトを確認したほうがよいでしょう。
【短期就労ビザ】 現時点では、特急申請の適用は短期非移民就労ビザでは E-1, E-2, E-3, H-1B, H-3, L, O, P, Q, TN に限られており、特急申請料金$2500を支払えば15営業日内に審査されます。H-2B 短期季節労働者や R 宗教ビザの特急申請料金は$1500に設定されています。ただ、今までは学生ビザへの滞在資格の変更や延長申請や配偶者の滞在資格の延長申請には特急申請を利用することができませんでした。その為に、州によっては運転免許の更新に支障が出てくることもあり、子供の学校の送り迎えにも影響がでていました。特急申請の適用範囲が拡大されれば、F-1, F-2, J-1, J-2, M-1, M-2 等学生ビザや同伴家族ビザへの変更申請や E-1, E-2, E-3, H-4, L-2, O-3, P-4, R-2 など短期就労ビザや同伴家族ビザ滞在資格への変更や延長申請も、特急申請料金$1750を支払えば30日以内の審査が可能となります。
【移民ビザ】 永住権の第1, 2, 3優先枠の雇用主スポンサー移民申請は特急申請料金$2500を支払えば15営業日内に書類審査が終わりますが、第1優先枠の国際管理職枠と第2優先枠の国益免除枠 (NIW) は適用外となっていました。特急申請の適用範囲が拡大されれば、国際管理職枠と国益免除枠も特急申請料金$2500を支払えば45日以内の審査が可能となります。
【就労カード】 学生、配偶者や永住権申請などに伴う就労カードの審査も大幅に遅れており、現時点でおよそ7~12ヵ月ほどかかっているために、就労開始の遅れ、或は延長中に既存カードが失効し、仕事が一時中断するなどの問題がよくみられていました。特急申請の適用範囲が拡大されれば、特急申請料金$1500を支払えば30日以内の審査が可能となります。
また、学生ビザや永住権申請に伴う就労ビザ延長申請の場合は、延長中は既存のカードが失効しても180日間はカードが自動的に延長される措置がとられていましたが、今後はその他のビザ保持者にもこの180日の自動延長措置が適用される予定です。
尚、E と L ビザの配偶者は、2022年1月31日以降国外から入国した場合、I-94のビザ種類に E1S, E2S, L2S と配偶者を示す S が追記されるようになりました。I-94にこの S の追記があれば、就労カードがなくても就労できるようになりました。
【目標】 また、移民局が現在の審査時間の大幅な遅延状況を改善するために、特急申請以外にも各種申請書類の審査時間を短縮するための目標を発表しています。特急申請を伴わない場合でも、就労ビザ審査は2か月以内、学生ビザや観光ビザ滞在資格への変更や延長申請、家族の滞在資格の延長申請、就労許可証、旅行許可証などは3ヵ月以内、その他の申請書類は6ヵ月以内に審査が終わるように目標を掲げています。
執筆者について
このコラムは、Taylor English Duma 法律事務所の大蔵昌枝弁護士によって執筆されています。大蔵弁護士へのお問い合せは下記の情報を参照下さい。
1600 Parkwood Circle, Suite 200
Atlanta, GA 30339
Phone: 678-426-4641
E-mail: mokura@taylorenglish.com
本ニュース記事に関する注意事項 (DISCLAIMER)
本雇用・労働・移民法ニュース記事は弁護士として法律上または専門的なアドバイスの提供を意図したものではなく、一般的情報の提供を目的とするものです。また、記載されている情報に関しては、できるだけ正確なものにする努力をしておりますが、正確さについての保証はできません。しかも、法律や政府の方針は頻繁に変更するものであるため、実際の法律問題の処理に当っては、必ず専門の弁護士もしくは専門家の意見を求めて下さい。アイアイアイキャリア、Taylor English Duma 法律事務所および筆者はこの記事に含まれる情報を現実の問題に適用することによって生じる結果や損失に関して何ら責任も負うことは出来ませんのであらかじめご承知おき下さい。