[大蔵弁護士による米国ビザ情報] H-1B年間枠達成!
2022年8月23日、米国移民局は H-1B の年間枠が達成したと発表しました。3月に会社登録・抽選があり、当選者は4月から6月までに移民局に申請書類を提出しますが、年間枠分の申請がなかったら、7月に残存枠の再抽選を行います。当選しなかった人はオンラインのシステムの “Submitted” というステータスが “Not selected” に変更になりました。H-1B には6.5万の普通枠とアメリカの修士号以上の学位取得者向けの追加2万枠の計8.5万枠がありますが、これに対し今年の抽選には48万件以上の登録がありました。コロナによる人手不足のせいか、今年の当選確率は18%に満たない状態でした。H-1B の抽選に漏れても OPT 就労カードがまだ有効であれば、その有効期限まで米国内で就労することができます。OPT 失効後の選択肢としては、下記のオプションが挙げられます。
- H-1B 年間枠免除機関を通して H-1B を申請する、
- 再度学位取得のプログラムに入り、F-1 学生滞在資格を延長する、
- 米国内でその他の滞在資格へ変更する、
- OPT の猶予期間失効前に出国する。
【H-1B 枠免除機関】 非営利団体の大学機関、非営利団体の大学機関と連携プログラムがある機関 (たとえば、大学からインターン生をうけいれている病院など)、もしくは政府や民間の非営利のリサーチ団体などは、H-1B の年間枠制限の対象ではないので、年中いつでも H-1B を申請することができます。また、H-1B はフルタイムでもパートタイムでも申請できます。枠免除の雇用主が H-1B を申請すれば、枠免除の雇用主のもとで就労が続く限り、枠免除でない雇用主も第2雇用主として H-1B を申請することができます。ただし、この場合、枠免除の雇用主との雇用関係が終了すれば、枠該当の雇用主での雇用も無効となります。枠該当の雇用主が単独で H-1B をスポンサーするためには、翌年の年度枠で新たに H-1B を申請しなければなりません。
【F-1 滞在資格延長】 学校の他のプログラムに再入学して F-1 学生滞在資格を延長し、来年度再度 H-1B を申請する方法もあります。また、学位が異なるプログラムであれば、学校に9ヵ月在籍すれば、再度 OPT や CPT を申請することができます。また、学校内の仕事 (On-campus employment) に就くこともできます。
【その他滞在資格へ変更】
- 就労ビザ <E ビザ> 専門的な職務経験のある人で、雇用主が E ビザの条件を満たしていれば、E ビザ申請を検討することもできるでしょう。<L-1 ビザ> また、米国外の関連会社で1年勤務をして、1年後に関連会社間転勤用の L ビザを申請するオプションもあります。
- 研修ビザ <J-1> 研修目的であれば、米国外の大学を卒業して1年間の関連経験があれば、18ヵ月間 (旅行関係は12ヵ月) 実地訓練のできる J-1 研修ビザを申請することもできます。米国外の大学を卒業していなければ、米国外で5年間の関連職務経験が条件となります。<H-3> また、アメリカでの研修に関連する学歴や職歴がない場合は、H-3 研修ビザの申請を検討することもできるでしょう。ただし、H-3 は J-1 とは異なり、教室内での研修が主体となるため、実地研修は最小限にとどめなければなりません。最長2年間までですが、2年間を全部使うと、国外に半年でていないと H-1B や L ビザを申請できなくなります。
- 日本人以外 <H‐1B> チリ・シンガポール人には H-1B 普通申請の6.5万枠の中から6,800枠が別枠として設けられているので、この枠がなくなるまで H-1B の申請ができます。<E‐3> オーストラリア人で大学の専攻が職種と一致していれば、E-3 ビザを申請することができます。E-3 には10,500の年間枠がありますが、この枠がなくなるまで申請が可能です。<TN> カナダやメキシコ人には年間枠のない TN ビザがあります。TN ビザは主に STEM 分野の特定ポジションに限定されていますが、文系では会計、経済分析、カウンセラーなどが職種リストにあげられています。
- 観光ビザ <B-2>上記どのビザにも該当しない人で、とりあえずアメリカでの滞在期間を数ヵ月延ばしたい場合は、B-2 観光ビザ滞在資格への変更申請をすることができます。B-2 滞在資格では就学、就労することはできません。また運転免許を更新することもできませんが、この間に引越しの準備、或は旅行などすることは可能です。
【出国】
上記どれも該当しない、或は B-2 観光滞在期間も使い果たした場合、一旦日本にもどり、来年度の H-1B に再登録し、当選すれば H-1B を申請して、10月1日の H-1B 開始日前の10日前に戻ってくることができます。また、アメリカ国外の関連会社で1年間勤務し、関連会社間移動用の L ビザを申請して戻ってくることも検討できるでしょう。その間アメリカ国外で雇用されていれば、ESTA で短期出張することもできます。
執筆者について
このコラムは、Taylor English Duma 法律事務所の大蔵昌枝弁護士によって執筆されています。大蔵弁護士へのお問い合せは下記の情報を参照下さい。
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