[大蔵弁護士による米国ビザ情報] 永住権審査時間の大幅な遅延

米国永住権 (通称“グリーンカード”) の申請には、家族スポンサーによる申請、抽選による申請、雇用主スポンサーによる申請、亡命者による申請などがありますが、各過程の審査時間に大幅な遅れがみられています。特に、労働局の審査を経る必要のある雇用主スポンサーによる申請枠は、最近の労働局の審査の遅延も影響して、全体の処理時間にかなりの影響がきたされています。

Labor Certification】 雇用主スポンサーによる永住権の申請には5つの優先枠がありますが、そのうち第2申請枠と第3申請枠は移民局に永住権申請を提出する前に、労働局から Labor Certification (労働許可申請) の承認を受けなければなりません。Labor Certification とは、雇用主が外国人社員に対し平均賃金或はそれ以上の賃金をオファーすることを確認し、さらに地元のメディアに求人広告を掲示し、そのポジションの条件に見合った地元の応募者 (アメリカ市民或は永住権保持者) がいないことを証明するものです。もし、ポジションの条件を満たしている応募者がいれば、雇用主は外国人社員の永住権をスポンサーすることはできません。もし、ポジションの条件を満たしている応募者がいなければ、外国人社員の永住権をスポンサーすることができます。求人広告に対して応募してきた候補者の履歴書をレビューし、ポジション条件に該当する人がいなければ Labor Certification をオンラインで申請することができます。

Labor Certification を申請する前に、まず申請するポジションに対する平均賃金を労働局に申請します。平均賃金の審査時間は現時点で7ヵ月ほどかかっています。その後求人広告の掲示を終えて、ポジション条件に該当する応募者がいなければ Labor Certification を提出することができますが、この Labor Certification の審査時間はここ数年は6~7+ヵ月程かかっていましたが、現時点で12ヵ月ほどかかるようになりました。従って、労働局への Labor certification 申請過程全体で2年前後、つまり以前の審査時間に比べ倍以上かかるようになりました。

【雇用主スポンサー移民申請】 Labor Certification が労働局に承認されたら、次に雇用主は移民局に雇用主スポンサー移民申請を提出しますが、この審査時間は凡そ7~8ヵ月ほどかかっています。この審査時間はトランプ政権以前に比べれば倍ほど長引いてはいますが、この過程は特急サービスのリクエストを出すことができるので、特急料金と特急申請用紙を添付すれば、3週間以内に審査をしてもらうこともできます。

【永住権申請】 雇用主スポンサー申請が承認されたら、プライオリティ・デート (PD) を確認して、永住権申請までに待ち時間がないかを確認します。PD とは、Labor Certification を労働局に提出した日を示します。国別に年間枠が設定されているため、国によって待ち時間が異なります。国務省は、いつまでに Labor certification を申請した人が永住権提出できるか、PD を毎月アップデートします。国務省の PD チャートに自分の PD (或はそれ以降の日付) が表示されたら、最後に本人と家族による永住権 (グリーンカード) の申請を行うことができます。

この過程は、アメリカ国内に滞在しながら移民局に申請をするか、或は一旦国外に出て米国大使館或は米国領事館経由で申請するかのいずれかの方法を選びます。

1)移民局申請. 米国内で合法的な滞在資格を保持していれば、移民局に永住滞在資格への変更申請を提出します。永住権の国別枠による待時間がなければ、雇用主スポンサー申請と永住権申請を同時申請することもできます。永住権申請と同時に就労許可証と旅行許可証も申請します。ただ、移民滞在資格への変更の審査時間が以前に比べ5倍から10倍程に長引いており、審査場所によって差はありますが、現時点で平均20ヵ月から40ヵ月ほどかかっています。

2)米国大使館・領事館申請. もし、米国内で合法的な滞在資格が失効してしまった場合は、一旦国外にでて、国外の米国大使館或は米国領事館経由で永住ビザを申請することができます。国外で移民ビザを申請する場合は、旅行許可証や就労許可書を一緒に申請することはできません。また、トランプ政権時とそれに続く新型コロナの影響で国外での移民ビザ面接が一年ほど中断されたために、国外での永住ビザの面接待時間が非常に長引いています。国によって待ち時間は異なりますが、1年位かかる覚悟はした方がよいでしょう。

従って、以前は全過程で平均1.5年ほどかかっていた永住権申請は、現時点では3年から5年ほどかかる可能性があります。特に子供は21歳になれば同伴家族として申請できなくなるので、アメリカに永住を希望する人は、なるべく早めに永住権の申請を始めたほうがよいでしょう。

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このコラムは、Taylor English Duma 法律事務所の大蔵昌枝弁護士によって執筆されています。大蔵弁護士へのお問い合せは下記の情報を参照下さい。

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