[大蔵弁護士による米国ビザ情報] 永住権保持者と親のビザ選択肢

学生ビザ、就労ビザ、永住ビザなどでアメリカに滞在している者にとっては、自国にいる親の健康状態は常に心配の種だと思います。太平洋を挟んでいるために、親の健康状態が急に悪化した場合、即帰国というわけにもいきません。また、短期間看病のために帰国したはずが、親の状態が悪化したために滞在が長引いてしまったという状態に陥ることも考えられます。短期ビザ保持者の場合は、ビザが有効であれば帰国や渡米に問題はありませんが、米国永住権保持者は国外滞在期間に制限がでてきます。そこで、永住権保持者の長期不在と親のビザの選択肢について説明します。

【親の看病】日本にいる親の看病のために長期間日本に滞在しなければならない場合があります。しかし、永住権保持者が1年以上継続してアメリカを離れていると、原則として永住権は失効してしまいます。政府から通知はきませんが、次回入国時にグリーンカードを没収される可能性がでてきます。また、1年間のうち半年以上米国を不在にしていれば、米国に永住する意思がないと判断されれば、再入国の手続きを取らなければ次回は入国さないと忠告されることもあります。

再入国手帳:米国不在中もグリーンカードを維持するには、事前に再入国手続きを行うことができます。この再入国手帳は2年間有効で、この間は米国を離れていても米国の永住権を維持することができます。再入国手帳を延長することはできますが、米国不在期間が4年を超えると、米国に永住する意思を証明することが難しくなります。

米国市民権:その他の選択肢として、米国市民権を申請する方法があります。米国市民はアメリカを長期間離れていても問題視されません。また、米国バスポートが失効しても、国外の米国大使館や米国領事館でパスポートの更新を申請することができます。

米国市民権を申請するためには、永住権取得から実質5年、米国市民との結婚により永住権を取得した場合は実質3年以上アメリカに滞在していることが条件となります。また、申請直前の5年間の半分 (結婚による永住権であれば3年間の半分) は米国に滞在していなければなりません。したがって、2年半以上 (結婚による永住権であれば、18ヶ月以上) 米国を離れていれば、米国市民権申請の条件を満たさなくなるで、米国を離れる前にあらゆる選択肢を検討したほうがよいでしょう。

しかしながら、自らの意思で米国市民権を取得した場合、日本のパスポートの更新ができなくなります。その場合、米国市民として日本への滞在ビザを申請して日本には外国人として入国することになります。

【親の呼寄せ】日本に親の面倒を見る人がいなくなり、親を米国に呼びよせる必要がでてくる場合があります。短期に呼びよせるためにはビザ免除プログラム ESTA や B2 観光ビザを申請する選択肢があります。

ESTA:親は ESTA をつかって一回に90日まで米国に滞在することができます。しかし、ESTA はアメリカ国内での滞在期間を延長することができません。また、一年間に合計で180日以上アメリカに滞在することはできません。

B2 観光ビザ:10年間有効な B2 観光ビザを申請することもできます。B2 ビザは通常一回の入国で90日から180日ほどの滞在を許可されます。米国内で B2 滞在期間の延長申請をすることはできますが、B2 ビザは移民する意思をみせてはいけないビザなので、永遠にアメリカに滞在することはできません。アメリカでの滞在期間が長くなればなるほど、次回入国時に入国の意図を問題視される危険が高くなります。

永住権:ESTA や B2 観光ビザは短期滞在者用なので、親が日本に戻る予定がないのであれば、親の永住権をスポンサーする選択肢があります。しかし、永住権保持者は親の永住権をスポンサーすることはできません。永住権保持者は米国市民権を取得すれば、米国市民スポンサーとして親の永住権を申請することができるようになります。

親の永住権申請は、アメリカ国内か日本で申請することができます。アメリカに滞在している場合はアメリカ国内で申請できますが、ESTA や B2 観光ビザで入国した場合、入国から90日以内に永住権の申請を提出することはできません。入国から90日以内に永住権を提出した場合、入国時の意図を偽ったと判断され、永住権が却下される可能性が非常に高くなります。日本の米国大使館を通して移民ビザを申請する方が無難ですが、日本での面接までの待ち時間が長いため、日本での待機期間は長くなります。従って、親の健康状態によってどの方法が一番望ましいのか、事前に検討する必要があります。

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このコラムは、Taylor English Duma 法律事務所の大蔵昌枝弁護士によって執筆されています。大蔵弁護士へのお問い合せは下記の情報を参照下さい。

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