[大蔵弁護士による米国ビザ情報] 永住権 Priority Date の後退
米国永住権 (通称 “グリーンカード”) の申請には、家族スポンサー、雇用主スポンサー、抽選永住権、亡命者による申請などがありますが、各過程の審査時間に大幅な遅れがみられます。また、Priority Date (PD) の大幅な後退により、PD が回ってくる前に自分の滞在資格が失効してしまい、アメリカに滞在できなくなる人が増えるなど、新たな問題が浮上しています。
Priority Date (PD) とは、Labor Certification の提出日、Labor Certification 免除の場合は I-140 の提出日を指します。国別に年間枠が設定されているため、国によって PD が異なります。国務省は毎月申請受付日を発表しており、その日が自分の PD を過ぎれば最後の永住権申請を提出することができます。 |
【Labor Certification】雇用主スポンサー申請の中でも、労働局の審査を経る必要のある雇用主スポンサーによる第2申請枠と第3申請枠は、最近の労働局の審査遅延も影響して、全体の時間 (平均賃金、求人広告、LC 審査) が12+ヵ月から24+ヵ月ほどと以前に比べ倍以上かかるようになりました。
【雇用主スポンサー申請】Labor Certification 承認後は雇用主による移民スポンサー申請を移民局に提出します。この審査時間は現時点で凡そ6~8ヵ月ほどかかっています。特急サービスを利用すれば3週間以内の審査となります。第1優先枠の国際役員・管理職枠と第2優先枠の国益免除 (NIW) の枠の特急サービスは45日以内の審査となります。
【永住権申請】雇用主スポンサー申請承認後は、永住権申請までに待ち時間がないか PD を確認します。日本人の場合は2月時点で第1優先枠は待ち時間はなし、第2優先枠は PD が04/01/2023、第3優先枠は PD が12/01/2022或はそれ以前の人の申請を受け付けています。I-94 の滞在期限が失効する前に自分の PD が回ってきたら永住権の申請 (I-485) を提出することができます。申請中はアメリカ国内に滞在して審査を待つことができます。審査時間は以前に比べ非常に長引いており、現時点で平均16カ月から30+カ月ほどかかっています。
米国内での永住権申請は、就労許可書と旅行許可書も一緒に申請できるので、申請中に I-94 が失効したら、就労許可が来るのを待って就労を再開することができます。また、H-1B と L ビザ以外の人は、旅行許可書が届いたら国外にでることもできます。入国時は旅行許可書をみせて入国することになり、入国後は短期就労ビザではなく、就労カードを使った就労に変わります。
【滞在資格の失効】H-1B と L ビザは移民する意思を示してよいビザなので、永住権申請中の延長申請や出入国が可能です。H-1B 保持者の場合は6年満期がきても、Labor Certification を申請して1年が経過していれば、H-1B を6年目以降も延長することができます。L ビザ保持者は L-1A 満期7年、L-1B 満期5年を満たすまでは延長申請をすることができますが、それ以降は延長できません。その他のビザ保持者は自分の PD が回ってくるまでに I-94 の滞在期間が失効した場合、アメリカ国内での永住権の申請 (I-485) はできなくなります。その場合は、最後の申請は、国外の米国大使館か米国領事館経由の移民ビザの申請に切り替える必要があります。
永住権申請中、上限を超えて就労ビザ滞在資格を延長できるのは H-1B だけなので、H-1B に変更できるオプションのある人は早めに H-1B に切り替えたほうがよいでしょう。ただ、H-1B は年間の抽選に当選した者のみ申請できるので、当選する保証はありません。また、H-1B と L ビザの滞在期間は一緒に換算されるので、L ビザをすでに6年間使った人は H-1B を申請することはできません。
【滞在資格失効後の就労】ここのところ年間枠が早めになくなっているために、最後の段階申請までに数年の待ち時間ができています。そのために、PD が回ってくる前に就労滞在資格を失ってしまう人が増えています。特に H-1B 以外のビザ保持者は、PD が回ってくる前に滞在資格が失効してしまうと、アメリカでの滞在資格を失ってしまいます。
- H-1B/L の再申請. その場合、一旦国外にでて国外の関連企業で就職しながら PD の順番をまつこともできます。国外に最低一年出ていれば、再度 H-1B や L ビザを申請する資格ができるので、H-1B や L で再入国して、引き続き米国内で就労しながら順番をまつこともできます。
- Compelling Circumstance EAD. その外には、アメリカ国内に居残ったまま、I-94 の失効前に I-140 承認を元に Compelling Circumstance (差迫った事情) という理由で 就労許可書を申請するオプションがあります。就労許可書が発行されれば、I-94 失効後も米国で引き続き就労することができます。ただし、滞在資格は既に失効しているため、最後のステップは日本の米国大使館または米国領事館で永住ビザを申請することになります。この方法だと、日本での面接日が決まるまで、就労カードを使って引続き米国内で就労できるので、国外での待機時間を最小限に抑えることができます。この過程は複数の申請がかかわり注意が必要なので、必ず専門家に相談したほうがよいでしょう。ただし、新政権がこの種類の就労許可書発行を継続するかは不明なので、必ず最新の情報を確認したほうがよいでしょう。
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このコラムは、Taylor English Duma 法律事務所の大蔵昌枝弁護士によって執筆されています。大蔵弁護士へのお問い合せは下記の情報を参照下さい。
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