[大蔵弁護士による米国ビザ情報] 学生ビザの審査強化

2025年5月に国務省は F ビ​​ザ、M ビザ、J ビザ申請者に対する審査強化を発表し、審査プロセスの一環としてソーシャルメディアのプロフィール公開を義務付けたために、2025年5月27日より各国での学生のビザ面接が一時的に停止していましたが、2025年6月18日からビザ面接を再開すると発表しました。トランプ政権は、ビザ発給審査は国家安全保障の観点から、申請者が米国民および米国の国益を害する意図を持たないこと、入国目的に応じた活動をする意思があること、入国条件を満たしていることを証明しなければならないとしています。そのために、各国の米国大使館と領事館に対し、申請者のオンライン上での活動内容が米国に敵意がないか、テロや反ユダヤ主義テロ組織への支持をしていないかなど、米国安全保障上の懸念事項がないか確認するよう指示をだしました。

ソーシャルメディア情報開示に関しては DS160 のオンラインビザ申請書類に数年前から既にこの質問は追加されており、ビザ申請者はみな過去5年に使ったことのあるソーシャルメディアのユーザー情報を記入しています。審査官も違反事項がないか、申請内容に偽りがないかなど調べていました。しかしながら、今回の方針により、ソーシャルメディアに開示している情報はさらに厳しくみられることになります。領事館は申請者に米国の市民、文化、政府、機関、または建国理念に対する敵意の兆候がないかなどソーシャルメディア情報を確認します。外国のテロリストおよび米国の国家安全保障に対する脅威の擁護、援助、または支援、あるいは違法な反ユダヤ主義の嫌がらせまたは暴力支援に関連するような情報がみつかれば、ビザが却下される可能性もあります。ただし、学生ビザ申請者の中でも、J-1 ビザの医師および留学生数が少ない (15%以下) 教育機関に通う学生の面接を優先される予定です。

留学生全体のビザ審査強化に至った背景には、5月に発表された中国籍留学生とハーバード大学への留学ビザの取消方針があります。5月28日にトランプ政権は中国共産党と関係のある学生や重要分野を専攻する学生を含む中国人学生のビザを積極的に取り消すと発表しました。5月30日には、ハーバード大学の学生・交流訪問者プログラム (SEVP) の認定を取り消すと発表しました。これは、大学の外国とのつながり、過激主義・暴力や反ユダヤ主義助長など一連の行動規範違反への対応不備や中国共産党との連携への懸念に基づきトランプ政権がとった措置です。ハーバード大学は政府を相手に訴訟を起こし、ビザ発給の取消は宗教、言論、出版、集会、政府に請願する権利などを基本的自由を保護する米国憲法修正条項第一条の明らかな違反だと主張しました。大学側の仮差止命令の要請は認められ、訴訟中はビザ発行の取消は一時的に阻止されています。

このような不安定な状況の中、ハーバード大学で学ぶ留学生が他の大学に移籍したり、あるいは中国人学生も含め留学先を他国に変更したりするなど、アメリカの大学離れの傾向もみられます。これら政府の措置に対する訴訟は未だに続いていますが、特に理系の中国人留学生やハーバード大学の留学生を OPT や CPT で雇用している雇用主は、今後の訴訟の動向を見守る必要があるでしょう。

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