[大蔵弁護士による米国ビザ情報] 出張者のビザオプション

2025年9月4日に現代自動車バッテリー工場で移民捜査当局 (ICE) によるアメリカ史上最大規模の摘発が行われ、475人の労働者が拘束されました。拘束者の中には300人以上の韓国人が含まれており、日本人も3名含まれていると報道されています。当局側は拘束者は滞在資格違反或は不法就労に携わっていると説明していますが、現代自動車は作業者は直接雇用した労働者はいないが、合法に作業をしていたと説明しています。ほとんどの拘束者は日本人もよく使うビザ免除プログラム (ESTA) や B1 短期商用目的のビザで入国していたと報道されています。ここで、短期商用目的でアメリカに出張する者の注意点について説明します。

日本からの出張者がよく使う ESTA とはオンラインで申請できる電子渡航認証のことで、オンラインで個人情報の登録を行えば、短期商用・観光目的で入国し、一回に最長で90日まで滞在することができます。ただし、一年間に合計で180日以上滞在することはできません。ESTA は、アメリカでの活動内容は取引先との会合、科学、教育、専門、ビジネス分野の会議への参加、財産の処理、契約交渉を目的とする渡航者を対象としています。ESTA で入国した場合、アメリカ国内で就労することはできません。

しかしながら、これには例外があり、技術者が日本など国外から米国企業に販売した商工業用機械・機器の設置、サービス、または修理等を行う目的で渡米する場合、機械設置のために技術者を派遣することが売買契約に明記されていれば、ESTA で入国することができます。ただし、技術者はこれらのサービス提供に必要な専門知識を有していることが条件で、米国を源泉とする報酬を受けることはできません。また、企業はこれらのサービス提供に対し当初の売買契約書に定められたもの以外の支払いを受けることはできません。また、商工業設備および機器の設営、サービス、修理のために米国人の研修を行う目的で渡米する技術者にも該当します。このような場合も報酬は日本の企業から支払われ、研修が行われることが売買契約書に明記されていなければなりません。予定される活動が記載されていない場合は就労ビザが必要となります。ただし、この例外事項は建築業務には該当しません。

ESTA での入国を試みて、入国時に就労目的を疑われると、第2次審査室に連れて行かれます。入国官によっては、アメリカの訪問先に電話をかけて旅行者の入国目的を確認することもあり、本人の陳述とアメリカ訪問先担当者の回答内容に相違があったり、また本人の回答が矛盾していたりした場合などは、入国を拒否されます。同じ入国拒否でも、入国官の質問に正直に回答した結果、目的にあったビザを取得するように言われた場合は、単なる入国拒否となり、将来目的に合ったビザを申請して入国することができます。もし、入国官の質問に対して虚偽の陳述をしたと判断されると、将来入国禁止という判断を下されることがあります。この場合、却下内容によっては、将来ビザを申請する際に入国拒否理由の免除の申し立てるウエイバー申請を提出することも可能です。免除審査に通常2~3ヵ月ほどかかります。

ESTA での入国を拒否されたら、将来 ESTA の申請はできなくなりますが、他のビザを申請することはできます。就労を伴わない短期訪問目的であれば、ESTA の代わりに B1/B2 短期商用・観光ビザを申請することはできます。B1/B2 短期商用・観光ビザは、日本国籍保持者であれば通常10年間有効なビザスタンプを発行してもらえます。入国時は入国目的に応じて一回に90日から180日以内の滞在資格をもらうことができます。ESTA とは異なり、B1/B2 ビザ保持者は、正当な理由があれば米国内で滞在資格を延長することができます。アメリカ国内で許されている活動内容は B1 と ESTA は同じです。

従って、日本からの短期出張者は、入国目的に応じたプログラムやビザ種類を選択して入国することが賢明といえるでしょう。また、入国時には日本の雇用主からレターを持参し、渡米目的を明確にし、アメリカでは法律上許容されている活動に従事することを説明できるように事前に準備することが大切です。アメリカ側からの招待状も準備したほうがよいでしょう。例え短期間の滞在であっても、アメリカでの活動が “就労” ととらえられるような内容であれば、L、E、H-1B などの就労ビザを取得してから入国したほうがよいでしょう。

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このコラムは、Taylor Duma 法律事務所の大蔵昌枝弁護士によって執筆されています。大蔵弁護士へのお問い合せは下記の情報を参照下さい。

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