🇺🇸 アメリカの日系企業が直面する採用の転換点(後編)

― “本社依存”から脱却し、現地発想の採用へ ―
前編では、リーマンショックやコロナ禍を経て、アメリカにおける日本人人材の減少と高齢化が進み、バイリンガル人材が「絶滅危惧種」となりつつある現実についてお伝えしました。
今回は、弊社代表の藤原昌人が2025年7月のジェトロ・ニューヨーク講演会でお話しした内容をもとに、これから日系企業がどのように採用を変えていくべきかを考えます。
🏢 採用スピードがすべてを左右する時代へ
藤原は講演の中で、日系企業が抱える根本的な課題として、「採用スピードの遅さ」を挙げました。
特にニューヨークやロサンゼルスなど都市部では、日本本社の承認プロセスを経ることで採用判断が遅れ、結果的に優秀な候補者を逃してしまうケースが増えています。
加えて、日系企業同士で給与条件を揃える「横並び意識」も、現地採用市場では不利に働いています。
「本社基準ではなく、現地市場の基準で考えること。採用判断はスピードと柔軟性がすべてです。」
この姿勢が、アメリカ市場で生き残るための第一歩です。
🌎 地域によって“採用の成功パターン”は違う
中西部・南東部・テキサスなどでは、隣接する米系企業の給与や待遇を基準にしながら、スピード感をもって採用を進める企業が多く見られます。
これらの地域では、
- 解雇を恐れずに採用
- 工場のオートメーション化で人員不足を補う
- バイリンガル人材が少ない前提で、ポテンシャル重視の採用を行う
といった「現地型経営」が定着しています。
一方、ニューヨークやロサンゼルスでは、採用の意思決定が日本式に近く、「検討中の間に候補者が他社へ行ってしまう」ケースが少なくありません。
いま求められているのは、地域差を理解し、現地文化に合わせて採用戦略を変える柔軟さです。
💬 完璧な人を探すより、“活かす採用”を
藤原が強調しているのは、「完璧な候補者を探すよりも、どう活かすかを考える採用」。
「要望が5つあるなら、上位3つで判断し、あとは“その人をどう活かせるか”を考える時代です。」
たとえば、JET Program修了者や、非日系のバイリンガル層など、日本語力がやや不足していても、意欲・学習力・チーム適応力で大きく成長するケースがあります。
採用後の育成を前提に考えることが、これからのアメリカ市場での人材戦略のカギになります。
⚖️ “解雇を恐れない”採用文化へ
アメリカはat-will employment(随意雇用)の国。
制度的に見れば、解雇は「悪」ではなく、適切なプロセスを踏めば当然の選択肢です。
「解雇規定を整え、人事考課を日常的に行い、労働法に詳しいアドバイザーを社内に置くことが重要。」
つまり、「解雇を恐れない=採用を進められる」という構図です。
採用スピードを上げるには、まず“安心して採用できる仕組み”を整える必要があります。
💡 多様な人材プールを見直す
今後は、Eビザなどを活用した柔軟な採用も視野に入れる必要があります。
在米日本人の減少が進む中、永住権保持者・留学帰り・ハーフ世代・日本語学習者など、従来の日系コミュニティの外にいる人材に注目することが欠かせません。
弊社iiicareerでは、バイリンガル採用の概念を「日本語が話せる人」ではなく、
“日本企業文化を理解し、グローバル環境で橋渡しできる人”と再定義しています。
🚀 採用の未来は「現場から変わる」
全米で採用支援を行う中で、私たちが強く感じるのは、“現場が即断できる企業”が採用に強いということです。
本社承認に頼るより、
- 現地チームが最終判断できる体制
- 市場データに基づいた給与提示
- 候補者体験(Candidate Experience)の改善
を行う企業が、確実に採用競争を制しています。
✳️いま、採用の現場が変わる
アメリカの日系企業が直面しているのは、単なる「人手不足」ではありません。
それは、時代の変化に対して、採用の在り方をどう進化させるかという問いかけです。
リーマンショック、パンデミック、ビザ規制、人口構造の変化――これらはすべて過去の出来事ではなく、「これからの採用をどう設計していくのか」という、私たちへのメッセージでもあります。
いま求められているのは、
“待つ採用”から “動く採用”へ、そして “守る採用”から “育てる採用”へ。
採用は企業の鏡です。
決断のスピード、文化への理解、そして人を信じる力。
その3つを備えた企業こそが、アメリカという多様な市場で、
次の世代のバイリンガル人材と未来を築いていけるのではないでしょうか。
私たちiiicareerは、
アメリカで働く一人ひとり、そして採用に携わるすべての企業と共に、
「つながり」と「成長」を生み出す現場を支え続けていきたいと思います。
お仕事のご相談はお近くのiiicareerオフィスまで。
執筆:iiicareer 編集部
参考:ジェトロNY講演会「今後の人材採用」(2025年7月、弊社代表・藤原昌人 講演)


