海外赴任帯同でキャリアは終わらない|駐妻・駐夫のためのキャリア再設計【体験談】 第1回

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はじめに

配偶者の海外赴任が決まり、まず考えることは「海外に帯同するべきか、それとも自国に残り今の生活を続けるか」ではないでしょうか。家族全員の幸せの最大化を軸に、子どもや親の状況に加え、仕事をされている方は自分と配偶者のキャリアなど、多岐にわたる要素を複雑な天秤にかけながら決断をしなければなりません。たとえ海外赴任が配偶者にとって願ってもないキャリアアップであっても、自分自身やその他の家族にとっては、必ずしも100%歓迎できる状況とは限りません。

葛藤の末に帯同を選んだとしても、それまで続けてきた役割やキャリアを手放すことで虚無感を抱く方も少なくありません。女性の社会進出が進む中、帯同が「キャリアクラッシャー」と語られることも増えています。加えて、円安を背景とした経済環境の変化により、金銭面において以前ほど余裕のある生活を維持することが難しいケースも増えています。これに伴い、「駐妻/駐夫」という言葉に対する世間のイメージも変化しつつあります。

しかしながら、海外生活は国内では得られない学びや成長の機会にもなり得ます。これまでのキャリアを一度手放すことで、逆に新たな方向性を発見する方もいれば、現地でキャリアを継続させるという選択肢が生まれることもあります。

このシリーズでは、現在まさに配偶者の海外赴任に帯同しながらインテレッセで働く筆者が、同じく海外赴任を機に新たな挑戦へ踏み出し、帰国後のキャリアチェンジやキャリアアップにつなげた方々のケースを紹介していきます。そこから得られる気づきやTipsを考察しつつ、キャリアに迷い悩む“駐妻/駐夫”の方々へエールを届けたいと考えています。

そして第1回目は、シリーズの背景として筆者自身の帯同とキャリア再構築の経験を紹介します。

新卒で外資コンサルへ──キャリアアップか駐妻かの選択

私は大学と大学院で情報科学を学んだ後、ITを活用したビジネスに携わりたいと考え、外資系コンサルティング会社へ入社しました。同期には海外経験の豊富な仲間が多く、ドメスティックに生きてきた私にとって大きな刺激を受けた時期でした。

入社後はSAPの会計モジュールを担当し、経験を積む中でプロジェクトマネージャーへの挑戦を打診されます。

しかしそのタイミングで夫の海外赴任が決定。キャリアアップの機会を前に、泣く泣く退職という選択をすることになりました。

初めての海外赴任帯同生活──専業主婦としての3年間

2007年、ワシントンDC近郊で初めての海外帯同生活が始まりました。当時は帯同者が現地で働く例はほとんどなく、当然のように専業主婦に。英語に自信がなかったため、はじめの1か月間はエチオピア人の家でホームステイをしたり、その後は語学学校にも通いましたが、「英語を学ぶだけの生活」には1年ほどで飽きてしまいました。

そこで、語学学校で出会ったブラジル人の友人に誘われてブラジリアンパーカッションバンドに加入して活動したり、主婦力アップのため地元の洋裁・編み物・料理教室に通ったり、近所の方に日本語を教えたりなど、地域コミュニティの中で過ごす時間が増えていきました。

そうこうしているうちに気づけば帰国半年前。復職活動のため一時帰国しましたが、当時はリーマンショック後。採用が冷え込む中、ブランク3年の私にとって復職は厳しい状況でした。就職支援を断られた人材紹介会社もありました。

そんな時に、退職後も定期的に連絡をくださった前職の上司から、彼の転職先の外資系コンサルティング会社への入社を打診いただき、再度コンサル業界で働く決意をします。

復職の目処が立ち安心した一方で、米国での3年間でキャリアにつながる経験がない焦りを感じ始めました。そこで何らかの資格だけでも、とTOEIC900点以上を目標とし帰国数ヶ月前に取得。ただ今振り返ると、帰国後のキャリアを見据え、渡米前から取るべき資格や学習期間など予め計画しておけば、その後の選択肢はもっと広がっていたかもしれません

そして帰国直前に妊娠が判明。帰国・復職・出産の3つの準備を同時に進める日々が始まりました。

再就職と3回の育休──仕事か育児かの葛藤

帰国後すぐに外資系コンサルティング会社へ入社。知識と経験を取り戻すため、必死に働きました。しかしようやく勘を取り戻し始めた半年後に産休・育休に突入。こうしてキャリアが不安定なままワーキングマザーとしてのキャリアが始まりました。

当時のコンサルティング業界は長時間労働が当たり前で、子育てをしながら働く女性はまだ少数派。3年間も主婦だった自分がコンサルタントとしてキャリアを継続すべきなのか、迷いながら過ごす日々が続きました。

キャリアに迷いや両立での行き詰まりを感じたときには、上司や同僚、家族に積極的に相談するようにしました。助けを求めれば、周囲の人は必ず何らかの解決策やヒントを提示してくれます。周囲の理解と協力に支えがあり、3人の出産・育児というライフステージの変化を経験しながらも、帰国後約14年間コンサルタントとしてのキャリアを継続することになりました。

2回目の海外赴任帯同──再び退職を選択

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3人目の出産による休職から復帰した約9か月後に夫の2回目の海外赴任が決定。さらなるブランクを伴う選択でしたが、子どもたちに海外経験をさせたいという思いが勝り、再び帯同を選びました。会社の休職制度の活用をまず検討したのですが、米国で働く可能性を見据え、最終的には退職を決意しました。

しかし積み上げてきたキャリアがより長くなっていた分、夫と子どもたちの新たな挑戦を喜ぶ一方で、自身の喪失感は大きく、気持ちが落ち込むことも多くありました。

米国での再就職──新たなキャリアとインテレッセとの出会い

再びDCでの生活をスタート。今度はキャリアを断絶させたくない、米国でも就業したい、という思いを夫に伝えていたため、夫の職場のサポートを受け渡米3か月後にEADを取得。就職活動はSNSを活用し、AI翻訳の精査やAIトレーナーといった単発案件から仕事を再開しました。小さな仕事ではありましたが、米国における生活の中で働き方を整えていくための大切な一歩だったと感じています。また、自分の力で収入を得られたこと、そして自分名義のクレジットカード申請が通ったときの嬉しさは、今でもよく覚えています。

その後、近所のママ友との会話をきっかけに、インテレッセで募集があるという情報を得、ワシントンDCオフィスの社員として働く機会に恵まれました。

日本では人材会社にコンサルティングサービスを提供することが多かったこともあり、海外の人材会社で仕事ができることに喜びを感じています。そして今、自分自身のキャリアが広がる実感を得られています。

やりたいことを周囲に伝えておくこと、そしてコミュニティを大切にすること。海外生活で改めてその重要性を実感しました。一方で、「いつか働きたい」と思った時点で人材会社に登録しておくことも、一つの選択肢だったと今は感じています。登録しておけば、自分にマッチした仕事があった際に声をかけてもらえる可能性があり、職探しにかける時間や労力を省くことにも繋がるためです。(弊社サービスへのご登録はこちら

おわりに──帯同をきっかけにキャリアを再設計しよう

海外赴任帯同は、不安や葛藤がつきものであり、キャリアの断絶にもなり得ることは事実です。しかし行動次第では、新たな選択肢や可能性が生まれるきっかけとなり、キャリアを再設計する貴重な期間にすることもできるのではないでしょうか。

また、キャリアは個人に帰属するものである一方、帯同に伴うキャリアの再設計は、家族との対話なしには成し得ないとも感じています。家族一丸となって構築する異国での新たなステージを、どのような価値基準で設計するのか。そこで個々人がどのような時間を過ごし、帰国の時点でどのような状態を目指すのか。こうした問いへの答えを言語化し、家族間で共有し続けることが大切ではないかとも考えています。

次回以降は、さまざまなケースを紹介しながら「帯同」と「キャリア」の関係を考察していく予定です。当シリーズが、米国で働く第一歩を踏み出そうとされている方の後押しになれば幸いです。

iiicareerでは、海外赴任帯同経験者やブランクのある方、
日英バイリンガルのキャリア支援を行っています。

✍️ 筆者プロフィール
Maiko Abe・阿部 麻衣子
Market Consultant・マーケットコンサルタント

iiicareer・interesse international inc. にて、リクルーティングに関するリサーチを中心に、コンサルティングやSEOを含む採用関連業務を担当。DC/NY/ヒューストンエリアを中心に人材支援に携わっている。

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