[アメリカ社長日記 −人・街・働くこと]②アメリカの健康保険制度

2025年10月の執筆を最後に、気づけば2026年を迎えてしまった。

実は11月、日本出張とヒューストン出張が立て続けに続いたあと、急性胆嚢炎を発症した。当時はそこまで深刻に受け止めておらず、気分はすこぶる悪かったものの、元来頑丈な身体でもあり、しばらく様子を見ることにしていた。出張後に自宅で2日ほど静養し、外出できそうだと感じたので車に乗り、会社へと向かった。だが運転を始めてしばらくした頃、突然全身の震えが止まらなくなった。車を停め、車内で震えが収まるのを待った。収まったところで出社を諦め「帰宅しよう」と運転を再開したが、途中で意識がなくなり交差点で停車している車に追突。その後、断片的な意識を頼れば、救急車で病院に運ばれた様子。意識が戻ったとき、私は病院のベッドで抗生物質と栄養剤の点滴を同時に受けていた。全身にバクテリアが回り、肝臓の機能も著しく低下していたという。除去と回復のために8日を要し、退院から約2週間後に胆嚢摘出手術。現在は、すべて良好な状態に戻っている。

九死に一生を得るとは、まさにこのことだ。今回の出来事は無知から来たものではあるが、自分自身の健康に対する過信を大いに反省させられた。体に現れていた症状の多くは、実はインターネットで調べればすぐに分かるものばかりだった。身体に何らかの危険を知らせるサインが起こったとき、躊躇せず、仕事を考えずに病院・ドクターに行きましょう。思うに、2025年は健康に対する過信から生じた生活悪習慣の結果ではあるが、最悪の事態を起こす前に神様が救ってくれた、まだ生きることに対して何らかの使命があると告げてくれたのではないかと信じている。

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緊急入院した最寄りの病院は、私の健康保険が適用されるインネットワークの Hoboken University Hospitalだった。これは本当に幸運だった。インネットワークであれば支払いの上限が設定されており、桁違いの未知数の医療費を請求されることはない。もしアウトオブネットワークの病院やドクターであったなら、話はまったく違っていただろう。アメリカではアウトオブネットワークの場合、医師が医療費を自身の裁量で設定できるため、法外な請求になる可能性が常にある。

アメリカには国民皆保険制度がない。高齢者向けのメディケア(Medicare)、低所得者向けのメディケイド(Medicaid)といった公的保険は確かに存在するが、それ以外は民間保険である。さらに、民間保険も保険会社ごとに無数のプランがあり、インネットワークとアウトオブネットワークの制度が複雑に絡み合っている。医療保険事務の専門家が存在するのも、その分かりにくさを物語っている。医療保険制度改革法(ACA、いわゆるオバマケア)により、保険加入義務化や保険市場の整備は進められたものの、課題は依然として多い。

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日本やドイツでは国民皆保険制度が基本で、国民一様に一定の医療保障が受けられる。一方でアメリカは、先進国でありながら、発展途上国のような側面も併せ持つ国だと言える。健康保険に限らず、ほとんどすべての分野において、アメリカは尋常でない格差社会である。事業の収益性、株主への配当、経営者への待遇が優先され、医療費は今後もさらに高騰していくだろう。それは資本主義の中心地であるアメリカにおいて、ある意味、当然の結果なのかもしれない。

2024年12月、マンハッタンでアメリカ大手保険会社 UnitedHealthcare のCEOが路上で射殺された事件は、記憶に新しい。


執筆
インテレッセインターナショナルグループ
社長 藤原昌人
1994年1月に人材会社の駐在員としてニューヨークに赴任。1996年の帰任命令に反して独立・創業。現在、全米11拠点、そして2022年から日本法人を設立し、日米双方で人材ビジネスを展開する。30年に及ぶ人材ビジネスでの知識と経験でビジネスに有益な情報や、人・街・働くことを届ける。