[大蔵弁護士による米国ビザ情報] 移民捜査局の取締活動
【不法移民捜査】昨年度より、各地域社会における安全と治安を強化する目的でトランプ政権による移民取締強化政策が執行されています。しかしながら、2025年9月に米国移民関税執行局 (ICE、以下 “移民捜査局”) により、現代自動車バッテリー工場の475人の労働者が拘束され、2026年1月にはミネアポリスの地元女性が移民捜査員に射殺されるなど、移民捜査活動の強化に対する地元住民の不安が広がっています。これに続き、1月23日の金曜日の夕方には ICE 車輌が大量にアトランタに輸送され、翌週にはジョージア州立大学や地元の高校に移民捜査局のエージェントの姿が見られるようになったため、学校当局も学習環境への影響を懸念しており、キャンパスで移民捜査員に引き止められた際の対応方法などについて生徒に呼びかけています。今まで安全だと思われていた学校や教会にも移民捜査局のエージェントがいきなり来ることがあるので注意が必要です。
移民捜査局は$38ビリオンもの資金を投資してジョージア州を含む各州で16もの不法移民収容施設の建設を予定しています。ジョージア州では北東の Oakwood 市に1500人収容施設、南東の Social Circle 市には1万人規模の大型収容施設を建設予定です。これらの施設が完成すれば、不法移民の大量の拘束が可能となります。
既に Gwinnett で運転中の若者が移民捜査局に停められ、パスポート原本の提示を求められたという情報もはいってきています。全国各地のウォールマートの駐車場にも移民捜査員出現していると報告されています。捜査官は移民局の入口でも待機しているようなので、移民局への出廷や面接に向かうときは、必ず身分証明書と滞在資格を示す書類を持参するなど注意が必要です。
【不法移民取締の歴史】2011年にはリーマン・ショックの影響で大量の失業者がでる中、依然として農業などの重労働に従事するメキシコ人に対して不満の矛先がむけられ、不法滞在のメキシコ人がアメリカ人の職を奪っていると不満が募り、40州で様々な不法移民取締法が決議されました。その中でもジョージア州を含む南部6州では、かなり厳しい移民取締法を可決したために、大量のメキシコ人が拘束され、強制退去されました。
そのような環境の中で、アラバマ州で運転最中に停められ、身分証明書を家に置き忘れた外国人が逮捕されました。後にそれがベンツの役員であることが判明したために、アラバマの州移民法取締法はマスコミからの批判を浴びました。アラバマ州の移民取締法では、外国人はパスポートなどの身分証明書を提示できなければ逮捕されることになっていました。これに引き続き、同州で日系自動車メーカーの社員も運転中に停められ、アラバマの免許を持っていないという理由でチケットを切られました。流石にベンツ事件の直後だったので逮捕はされませんでしたが、大手自動車メーカー2社の問題が浮上したために、アラバマ州は自動車産業の投資先としての評判を損なうことになりました。
2012年には、州政府による移民取締法は移民に関する連邦政府の権限を侵害するものであり、また、実際の捜査は特定人種に的を絞った差別的取締行為、不法捜査、不法拘留であり、合衆国憲法で謳われる正当な法的保護や法の平等保 護条項に反するとして、州レベルの移民取締法は無効であると連邦最高裁の判決が下されました。
【287g】州レベルの移民取締法を無効とされましたが、連邦政府との契約により地元政府機関が移民取締権限を行使できるプログラムは依然として残っています。287g とは1996年の不法移民改革法により追加された条項で、地元の政府機関が移民捜査局と合意書を結ぶことにより、地方自治体、州政府や各政府機関が特定の移民取締業務を遂行する権限を与えられるプログラムのことです。各地域の安全と治安強化目的で創設されたこのプログラムは、特定の人種や個人を標的とする事態につながるなど、公民権侵害を招くリスクがあるとの批判もあがっています。
しかしながら、トランプ政権の移民取締強化方針にそって、連邦政府と 287g の契約を結ぶ政府機関が増えています。2026年3月20日現在、39州および2つの米国準州を対象とする1,547件の政府機関がこのプログラムに参加しています。ジョージア州では、2011年当時はコブ、グイネット、ホール、ホワイトフィールドの4群に限られていましたが、現在では47にも上る市や群の刑務所、警察署、保安署、州矯正施設、州公安局などを含む58の政府機関が参加しています。
【身分証明書類】連邦捜査員、或いは地元の法執行員に停められた場合、必ず滞在資格を示す書類と身分証明書を持参するように心がけたほうがよいでしょう。身分証明書として、永住権保持者はグリーンカード、就労ビザ保持者は有効な I-94、学生ビザ保持者は I-94 と I-20 (或いは DS2019) の両方をもっていたほうがよいでしょう。現実にはパスポートの提示を求められることもあるので、有効な旅券も一緒に持参したほうが無難です。米国市民には書類持参の義務はありませんが、米国市民である証拠としてパスポート、或いは運転免許サイズのパスポートカードを申請し、持参したほうがよいと思われます。紛失に備え、各書類必ずコピーを保管したほうがよいでしょう。
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このコラムは、Taylor Duma 法律事務所の大蔵昌枝弁護士によって執筆されています。大蔵弁護士へのお問い合せは下記の情報を参照下さい。
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