[激変し続ける米国労働市場] 12. 日米の採用スピード・プロセスの違い(その1)
2022年8月に日本法人を設立し、2023年4月に本格的な営業活動を開始。
米国で30年間在住し、アメリカ式のビジネスに慣れて来ると改めて異なる日本の社会の「流儀」を異物として感じるものである。
僕自身が日本に在住していたときにはそれを奇異に感じていはなかったはずだが、このように長い年月を経て改めて体験するとその違いがよく分かる。ただし、30年前と書いたものの、30年前以前はドイツに2回の駐在期間があるので、実際はもっと長い期間日本の人材採用事情から離れていたわけである。

日本での採用プロセスには往々にして長い日数を必要とするのが一般的。もちろん、日本の外資系企業や、中小企業、人材獲得競争が著しく困難が産業や職種ではスピードも早いようだ。米国の大手日系企業の現地法人といえども日本本社の規模社員数はなく、面接のプロセス、会社の組織そのものも小さいわけで、採用のプロセスと決定スピードは早くなるものだ。もちろん中には日本国内様式を取り入れているのか求職者を著しく待たせる会社もある。例えば、最終面談となる役員面接において、役員全員の日程を調整し、そのために求職者を数週間から一ヶ月以上も待たせるケースがある。もちろん、その間に求職者の入社意欲は薄れていくか、あるいは他の就職機会を探すのは当然のことである。このようなケースは米国の日系企業では稀だが、日本の大手企業、あるいは社歴の長い企業の現地法人で、日本本社の影響なのかあるいにはある。

なぜ採用プロセスが長いのかを考えた。
日本では「解雇」という手段が一般的ではなく、一旦採用した後は「解雇」をしにくい法制度・慣習があり、そのために過度に慎重になっているとも考えられる。別の味方をすると社内において「解雇の直接的責任」を誰か一人が取らなくても良いように関係者がリスク分散をしているようにも見える。面接に出てくる関係者が非常に多いのはそのためであろうか。
アメリカでは解雇は通常であり、また、雇用主・従業員双方の権利として行使できる。採用の失敗はあってもすぐに次の段取りへとすすむ。もちろん法的なリスクをしっかりと見極めたうえで、判断は素早い。
雇用という一つの社会行為におてすら、日米間の思考、社歴からくる慣用(伝統?)などもことごとく異なっていると感じる。僕流の表現をすれば、アメリカは極めて理系的(論理的で汎用性が高い)のに対して日本は文系的(社会的・社内の慣用が多く残る)採用プロセスではないだろうか?
このような見方をするととてもおもしろい比較文化論になりそうだ。
執筆
インテレッセインターナショナルグループ
社長 藤原昌人
1994年1月に人材会社の駐在員としてニューヨークに赴任。1996年の帰任命令に反して独立・創業。現在、全米11拠点、そして2022年から日本法人を設立し、日米双方で人材ビジネスを展開する。30年に及ぶ人材ビジネスでの知識と経験でビジネスに有益な情報を届ける。