[大蔵弁護士による米国ビザ情報] 永住権と公的扶助

2019年8月14日に国土安全保障省は、アメリカ政府の公的扶助受益者の入国・ビザ申請拒否事由に関する新たな規定を発表しました。アメリカの移民法は自給自足を原則としており、生活保護など公的扶助を受けることが主な移民目的とならないように政策をとっています。この新規定により、外国人はアメリカへの入国時やアメリカ国内で学生ビザ・就労ビザ・永住権などを申請する際に公的扶助対象であるかを審査されます。しかし、米国市民や亡命者・難民など対象外の外国人においては、公的扶助を受けている、或は将来公的扶助の可能性があるのを理由に罰則や阻害要因をもたらすものではありません。

従来は、永住権申請時に申請者が生活保護に主に頼っているかを審査されましたが、新規定では、米国市民以外の外国人が、36ヵ月間に合計で12ヵ月以上特定の公的扶助を受けたかを審査されます。例えば、1ヶ月の間に対象となる公的扶助を2種類受けた場合は、2ヶ月の受給とみなされます。今回の新規定で、移民申請拒否の対象となる公的扶助の範囲が広がり、連邦・州・地元政府による所得維持のための現金援助、補助的栄養支援プログラム、Section 8プログラムによる住宅補助金や賃貸補助金、特定のMedicaid受給者 (21歳未満や妊婦を除く)、Section 9プログラムによる公営住宅、などの補助プログラムが対象となります。

家族スポンサーによる永住権申請の場合、従来は扶養宣誓供述書を提出し、申請者の所得や資産情報を開示することにより、扶養家族を養う財的条件を備えていることを証明することができました。今回の規定では、扶養宣誓供述書だけでは将来のいかなる時点においても生活保護の対象にならないという保証はないとしており、永住権申請者は公的扶助の対象にならない証拠として、新たにI-944自給自足宣誓フォームの提出を義務付けられます。I-944には申請者の家族、収入、資産、負債、保険、教育、スキル、外国語、雇用などの情報を記入します。これら総合的情報をもとに、将来のいかなる時点においても公的扶助の対象にならないかを審査されます。また、永住権申請前の36カ月の間に合計12ヵ月以上対象となる公的扶助を受けていれば、財的条件を備えている証明が非常に難しくなります。新規定施行前の受給は対象となりません。ただし、新規定施行以前からすでに移民申請拒否の対象となる公的扶助を受けていた場合は、その受給期間も対象となります。

学生や就労ビザなどの非移民ビザ滞在資格の延長や変更申請の場合は、比較的簡素化された基準が適用されます。この場合、当該非移民ビザ滞在資格が開始してから、延長・変更を申請するまでの間の36カ月間の内合計で12ヵ月以上対象となる公的扶助を受けたかを審査されますが、将来のいかなる時点においても公的扶助を受ける可能性があるかという基準は適用されません。

各国の米国大使館や領事館を統括する国務省は既に永住権審査基準を厳しくしており、公的扶助要因があるかを慎重に審査しています。そのため、過去一年間のアメリカ国外からの永住権申請の却下率が上昇しています。2016会計年度には公的扶助を理由に永住権申請を却下された人は1,033人だったのに対し、2018年10月から今年の7月末までの間に同様に公的扶助を理由に永住権申請を却下された人はその10倍以上の12,179人にも上っています。特に、メキシコからの申請者が公的扶助の可能性を理由に却下が増えているようです。この新規定が施行されると、永住権申請の却下率がさらに高くなると予想されています。この新しい規定に対し訴訟や差止命令など施行時期を遅らせる措置がとられない限りは、予定通りに10月15日からこの新規定が適用されます。

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