[大蔵弁護士による米国ビザ情報] STEM-OPT監査

移民税関捜査局 (ICE) は、今年の7月以降STEM-OPT研修生の監査を強化しています。Optional Practical Training (“OPT”) とはアメリカの大学で学位取得を目的とする学校にフルタイムで9ヶ月以上在籍した学生が、在学中もしくは卒業後に申請できる就労許可証のことです。OPTを使って卒業前、後合わせて合計で12ヶ月まで研修・就労することができますが、2016年5月より、理数系 (STEM) の学生であれば、OPTをさらに24ヶ月間延長することができるようになりました。この延長をSTEM-OPTといいます。

移民税関捜査局は、STEM-OPT研修生を採用している会社を訪問し、STEM-OPT研修生とその上司 (人事か管理職) と面談して、STEM-OPTのコンプライアンス状況を確認します。具体的には、雇用主が政府に提出したフォームI-983の研修内容をレビューし、研修内容が専門分野と関連しているか、学習目標が明確にされているか、研修内容に変更がないかなどを調べられます。また、STEM-OPT研修生がアメリカ人社員の職を奪っていないか、STEM-OPT研修生の賃金が同職に就くアメリカ人社員の賃金より低く設定されていないか、などを調べられます。その他には、研修の進行状況と学習目標の達成状況に関する学生の自主評価、さらに雇用主が大学のインターナショナル・オフィスのDSO (Designated School Official) への報告義務を順守しているかも調べられます。

監査に対応するために、雇用主はOPT-STEMの関連法を順守しているかを確認し、移民捜査局エージェントが来た時に誰が対応するかなど事前に準備を行ったほうがよいでしょう。下記に注意点を挙げます。

  • 研修内容が大学の専攻内容と一致しているか確認、
  • 学習目的がはっきりとしているか確認、
  • どのように学習目標を達成するのかを確認、
  • 研修内容に変更あれば、新しい研修内容をI-983フォームに記載し、大学に提出したか確認、
  • 研修生の給与レベルが同職種の社員より低く設定されていないことを確認、
  • 研修学習目標達成状況に関し、研修生と雇用主によるDSOへの報告義務を確認、
  • 研修終了後、或は途中で終了した場合、5日以内に大学のDSOに報告したか確認、
  • 研修生が他のフルタイムやパートタイム社員、或は短期契約社員の職を奪っていないことを確認。

もし、STEM-OPTの規定を順守していなければ、滞在資格違反を問われ、オーバーステイのカウント、さらに裁判所出頭命令の通知を受けることも考えられます。5月に発表された政府の新しい方針により、滞在資格に違反があれば学生ビザ保持者も不法滞在扱いとなり、オーバーステイが180日を超えると3年間アメリカへの入国禁止、オーバーステイが365日を超えると10年間アメリカへの入国禁止処分となりますので、雇用主も学生もSTEM-OPTのコンプライアンスに漏れがないよう十分に注意する必要があります。

公的扶助に関する法律の施行一時差し止め

尚、先月号で説明した、2019年10月15日から施行予定だった公的扶助受益者のビザ申請に関する法案は、法廷から最終的な判断がでるまで、一時的に施行が差止になりました。

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このコラムは、Taylor English Duma法律事務所の大蔵昌枝弁護士によって執筆されています。大蔵弁護士へのお問い合せは下記の情報を参照下さい。

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