[大蔵弁護士による米国ビザ情報] 配偶者・学生の審査時間の短縮化

トランプ政権により打ち出された数々の移民政策のために、家族や学生滞在資格の延長・変更申請や就労許可書審査が大幅に遅れ、運転免許の更新ができない、また雇用が中断するなどの問題で訴訟が起こされていました。それに対し、これまでに審査時間の長期化を改善するためとられた措置について説明します。

【就労ビザ

家族の特急申請. 特急申請の適用は短期非移民就労ビザでは E-1、E-2、E-3、H-1B、H-3、L、O、P、Q、TN に限られており、特急申請料金$2500を支払えば15営業日内に審査されます。ところが、トランプ政権により家族の申請に指紋押捺が義務付けられたために、家族の審査時間が非常に長引いていました。その為に、州によっては運転免許の更新に支障が出てくることもあり、子供の学校の送り迎えにも影響がでていました。バイデン政権はそのように家族の申請の遅れを改善するために,2021年5月には H-4、L-2 または E ビザの家族の指紋押捺義務を2023年5月17日まで一時的に停止しました。 その後、指紋押捺の一時免除措置は2023年9月30日まで延長されました。

配偶者の就労許可証. 家族の延長申請提出時に L-2 や H-4 配偶者は就労許可証も同時に申請できました。しかしながら、H-1B や L-1 保持者が特急申請で滞在資格延長・訂正申請 (I-129) を提出しても、家族の申請は特急扱いされないために、配偶者の就労許可証の審査時間も非常に長引いており、審査中に古い就労カードが失効し就労が中断されるなど問題が発生していたために、移民局に対して訴訟が起こされました。

これに対する和解策として、2021年11月には、L と E の配偶者は、I-94 のビザ滞在資格に L2S, E1S, E2S と配偶者を示す “S” の文字を追記することで、就労許可証を申請しなくても就労できるようになりました。また、 H-4 配偶者も I-94 が失効する前に滞在資格の延長と就労許可証申請を提出した場合は、審査中も就労許可の期限が最長で180日間自動的に延長されるようになりました。

また、2023年1月19日には、家族の申請書類の審査に関しては、トランプ政権以前の方針に戻すことになりました。つまり、H-1B、L-1、E などの短期就労ビザ保持者が特急で申請した場合、その家族も一緒に滞在資格延長・変更申請や就労許可書申請を提出すれば、就労ビザ保持者の申請と同時に審査されることになりました。これにより家族の滞在資格と配偶者の就労許可申請の審査も早まることになりました。

【学生ビザ

滞在資格変更. 2023年6月13日より、F-1、F-2、M-1、M-2、J-1、または J-2 ビザカテゴリーへの滞在資格の変更申請中の申請者は、普通審査から特急扱い (I-907) へのアップグレードを要請することができるようになりました。また、2023年6月26日より、F-1、F-2、M-1、M-2、J-1、または J-2 滞在資格の新規申請は、申請書類 (I-539) を特急申請と一緒に提出することができるようになりました。基本申請料金$370と指紋押捺費用$85に加え、特急料金$1750を支払うことにより30日以内に審査されます。

就労許可証. 新型コロナの影響で OPT の審査期間の大幅に遅れており、就労開始に遅れがでるなど問題が生じていましたが、2023年3月6日より、雇用許可書 (OPT) の申請や理数系専攻用の STEM-OPT の延長申請中の学生は、普通審査から特急扱いへのアップグレードを要請することができるようになりました。また、2023年4月3日からは OPT や STEM-OPT の新規申請時に特急で申請することができるようになりました。基本申請料金$410とは別途、特急料金$1500を支払うことにより30日以内に審査されます。就労許可申請が承認されたら、1〜2週間以内に就労 カードが発行され、普通郵便で郵送されます。承認から30日以内にカードが届かない場合は移民局のカスタマーサービスに問い合わせてください。

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このコラムは、Taylor English Duma 法律事務所の大蔵昌枝弁護士によって執筆されています。大蔵弁護士へのお問い合せは下記の情報を参照下さい。

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