[大蔵弁護士による米国ビザ情報] マリファナ合法化と外国人への影響

アメリカには連邦法と州法があり、移民法など連邦法だけで規制される分野もあれば、雇用法など連邦法と州法それぞれの規定に従わなければならない分野もあります。マリファナに関しては、1937年のマリファナ税法により、医療や産業用を除き、連邦法に基づいて米国全土でマリファナの所持または譲渡が違法となりました。医療や産業用使用者には高い税金が課せられました。1969年にはこの法律は最高裁により無効となり、1970年には規制物質法が制定され、連邦法により規制物質の製造、流通、輸出入、使用を規制されるようになりました。これにより、アメリカ内でのマリファナの医療や産業用の使用も一切禁止されました。

しかしながら、2012年以降医療用や娯楽用マリファナを州法で合法化する州が増えてきてます。2024年1月時点において、41州と DC で医療法用マリファナが合法化されており、24州で娯楽用マリファナが合法化されています。これらの州の住民はマリファナの保持や使用が合法化されますが、これらの州を訪問する外国人もその州でのマリファナ使用や所持が合法で、自分たちの移民法上の滞在資格やビザ申請に悪影響はないと思いがちです。しかしながら、短期ビザ保持者や米国永住権保持者を含め、米国市民でないビザ保持者は皆、移民滞在資格を連邦法で規制されているため、マリファナの所持、譲渡、販売、栽培、輸入または輸出は依然として連邦犯罪とみなされます。

連邦法上、マリファナ関連の有罪判決は移民法滞在資格に深刻な影響を及ぼします。仮に有罪判決は受けていなくても、自ら犯罪行為を認めた場合は、移民法上は、永住権申請や米国市民権申請の一条件となる Good Moral Character (道徳的人格) を否定されてしまいます。また、規制薬物保持により国外退去、或は入国禁止処分になる可能性があります。例外として、一回のみの犯罪で、個人使用目的或は関連する行為で30グラム以下の所持であれば、国外退去処分の理由にはなりませんが、一旦国外にでたら、入国禁止処分の対象となります。注意すべき点は、移民法上は刑法の解釈が異なることです。移民法上は、仮に有罪判決は受けていなくても、自ら犯罪行為を認めた場合も有罪と同様とみなされるため、入国禁止対象となります。

従って、例えマリファナの合法州だけでマリファナを所持或は使用した経験があっても、マリファナは連邦法上の規制物質であるため、米国入国時にマリファナを所持していたことを認めた場合、入国を拒否されるリスクがあります。また、ビザ申請書類に、「起訴も有罪判決も受けていない犯罪行為を犯したことがありますか?」という質問があります。例え、合法州での使用であっても連邦法違反となるのでこの回答は YES となり、ビザの発行に影響してきます。従って、米国市民権を持たない外国人がアメリカ国内でマリファナによる問題を避けるためには、下記の点に注意したほうがよいでしょう。

  • 米国市民になるまではマリファナの栽培・所持・使用を避けること。
  • 医療用のマリファナが必要な場合は、事前に法律相談を受けること。
  • マリファナに関する物質 (医療用カード、ステッカー、T シャツなど) を携帯しないこと。
  • 携帯電話、個人のウエブサイトやソーシャルメディアなどにマリファナ関連情報を載せないこと。
  • マリファナ使用歴やマリファナ業界で就労歴がある場合は、米国出国前、或は米国永住権や米国市民権申請前に法律相談を受けること。

お隣のカナダでは連邦レベルでマリファナが合法化されましたが、マリファナの使用は特定場所に限られています。州によっては大麻を使用できる公園も増えてきていますが、指定場所以外での使用は禁じられています。また、様々な製品にマリファナが使用されているため、マリファナやマリファナ成分入りのお菓子なども販売されていますが、マリファナを禁止している国に入国する際にマリファナ成分入商品を所持していれば、マリファナ所持罪で入国禁止、或は強制退去などの処分にあう可能性があるので注意が必要です。日本もマリファナを禁止しています。日本ではマリファナの輸入をすると最長7年禁固刑、販売目的で輸入すると最長10年禁固刑の対象となります。従って、マリファナが合法な国や州でお土産にマリファナ入お菓子などを買って、アメリカや日本などマリファナ禁止国に持ち込まないように注意するように心がけてください。

執筆者について

このコラムは、Taylor English Duma 法律事務所の大蔵昌枝弁護士によって執筆されています。大蔵弁護士へのお問い合せは下記の情報を参照下さい。

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