[大蔵弁護士による米国ビザ情報] 応援者のビザオプション
新型コロナの影響で労働者不足が続いており、特に製造業から技術者の採用が非常に難しいという声をよくききます。また、退職者も増えているようで、生産にも支障がきたされている様子がみられます。現地社員の採用困難のため、生産計画に支障がでないように、駐在員が退職者の穴埋めをしたり、また、日本からの応援者を派遣したりする傾向がみられます。そこで注意すべき点について解説します。
E や L などのビザで入国した場合、役員職、管理職、専門職のいずれかのカテゴリーでビザを申請していますので、渡米後も申請したカテゴリー内の職種に従事しなければなりません。職務内容が変更する場合は、事前に訂正申請が必要か判断しなければなりません。例えば、移民局からの監査が入り、管理職で申請した駐在員が退職した労働者が担当していた機械を操作していれば、申請内容を偽ったと判断され、滞在資格を取り消される可能性もあります。同じような職種への変更で、職務内容もさほど変わらない場合、訂正申請は不要ですが、新しい職務内容が現在の職務と大幅に異なる場合は、事前に訂正申請をし、承認されていなければなりません。例えば、専門技術職から部下付きの管理職に変わる場合、或は管理職から専門技術職に変わる場合などは事前の訂正申請が必要となります。ただし、専門性を持たない単純作業は E や L ビザの専門技術職としては認められないので注意が必要です。
日本から応援者が来る場合、よくビザ免除プログラム (ESTA) を使って入国する例がみられます。ESTA とはオンラインで申請できる電子渡航認証のことで、オンラインで個人情報の登録を行えば、短期商用・観光目的で入国し、一回に最長で90日まで滞在することができます。ただし、一年間に合計で180日以上滞在することはできません。ESTA で入国した場合、アメリカでの活動内容は取引先との会合、会議参加、契約交渉、現場視察などに限られます。ESTA で入国してアメリカ国内で就労したり、賃金をもらったりすることはできません。従って、日本から応援者を呼ぶ場合、アメリカで何をするのかを明確にし、例え短期間の滞在であっても、アメリカでの活動が “就労” ととらえられるような内容であれば、L や E などの就労ビザを取得してから入国したほうがよいでしょう。
ESTA での入国を試みて、入国時に就労目的を疑われると、第2次審査室に連れて行かれます。入国官によっては、アメリカの訪問先に電話をかけて旅行者の入国目的を確認することもあり、本人の陳述とアメリカ訪問先担当者の回答内容に相違があったり、また本人の回答が矛盾していたりした場合などは、入国を拒否されます。同じ入国拒否でも、入国官の質問に正直に回答した結果、目的にあったビザを取得するように言われた場合は、単なる入国拒否となり、将来目的に合ったビザを申請して入国することができます。もし、入国官の質問に対して虚偽の陳述をしたと判断されると、将来入国禁止という判断を下されることがあります。この場合、却下内容によっては、将来ビザを申請する際に入国拒否理由の免除の申し立てるウエイバー申請を提出することも可能です。免除審査に通常2~3か月ほどかかります。
ESTA での入国を拒否されたら、将来 ESTA の申請はできなくなりますが、他のビザを申請することはできます。就労を伴わない短期訪問目的であれば、ESTA の代わりに B1/B2 短期商用・観光ビザを申請することはできます。B1/B2 短期商用・観光ビザは、日本国籍保持者であれば通常10年間有効なビザスタンプを発行してもらえます。入国時は入国目的に応じて一回に90日から180日以内の滞在資格をもらうことができます。ESTA とは異なり、B1/B2 ビザ保持者は、正当な理由があれば米国内で滞在資格を延長することができます。就労ととらえられるような渡米目的であれば、E ビザ、L ビザ、H-1B ビザなどの就労ビザを取得したほうがよいでしょう。従って、日本からの短期出張者は、入国目的に応じたプログラムやビザ種類を選択して入国することが賢明といえるでしょう。
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このコラムは、Taylor English Duma 法律事務所の大蔵昌枝弁護士によって執筆されています。大蔵弁護士へのお問い合せは下記の情報を参照下さい。
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