[激変し続ける米国労働市場] 10. ニューヨーク

日本に住む人々がアメリカを思い浮かべるとき、真っ先に頭に浮かぶのはニューヨークやロサンゼルスではないだろうか。この2つの都市は長年にわたり「アメリカの中心地」として親しまれ、多くの人々の憧れの存在である。

Photo by Jason Krieger on Unsplash

一方、日本では東京がその圧倒的な規模と存在感で日本を代表する都市とされており、現時点では東京に取って代われる都市や地域が現れる兆しは見えない。しかし、アメリカの場合、本当にニューヨークやロサンゼルスがその地位を独占しているのだろうか?

1996年にニューヨークのマンハッタンで起業し、全米の日系企業顧客を中心とした人材紹介事業30年の経験がある僕の目からはまったく違うものが見えてくる。2001年、アメリカでインターネットバブルが崩壊したが、インターネットによるコミュニケーションの利便性は引き続き拡大し、遠隔地ともスピーディーにそして大容量のデータ通信のを可能にしてきた。現在では一箇所に集中して住み、仕事をする必要がない職業・職種も増えてきた。

アメリカでは企業も人も、都市集中ではなく著しい地方分散の道を選んで成長している。これらはテクノロジーの進化と人間・家族生活のあり方の考えれば自然の流れ、当然のあり様と思う (摂理・道理に素直=理系的思考)。

これに対して、日本は技術進化のメリットや家族生活を犠牲にし、理解できない理由を残したまま、未だに首都圏にその集中度を高めている (摂理・道理よりも強い理由がある=文系的思考)。

Photo by Carlos Alfonso on Unsplash

現在のニューヨークは、多くの製造業がその米国本社を他州に移転してしまっている。残るのは金融業界や商業取引、その他はニューヨーク中心でビジネスを行っている不動産会社や飲食業 (地場産業) とメディア産業ぐらいではなかろうか。

全米を対象にしてレストランネットワークを広げようとする日系企業にはテキサス州に本社のあるところが多く、マンハッタンを対象地域外としている。ここで利益を生み出していくのは大変であることがわかりきっているからだ。

つまり、ニューヨークは東京のような何でも揃う巨大総合都市ではなく、アメリカの中で専門分野を持った都市といった方が理解しやすい。アメリカにはそのような専門大都市が多数ある。したがって、米国に進出する場合は、ニューヨークを東京都と勘違いしないで、自社の特性を活かせる都市を選択したほうが良いと僕は考えるが、皆さんのご意見はいかがだろうか。


執筆
インテレッセインターナショナルグループ
社長 藤原昌人
1994年1月に人材会社の駐在員としてニューヨークに赴任。1996年の帰任命令に反して独立・創業。現在、全米11拠点、そして2022年から日本法人を設立し、日米双方で人材ビジネスを展開する。30年に及ぶ人材ビジネスでの知識と経験でビジネスに有益な情報を届ける。