海外赴任帯同でキャリアは終わらない|駐妻・駐夫のためのキャリア再設計【体験談】 第2回

海外赴任への帯同をきっかけに、仕事から離れざるを得ないケースは少なくありません。
ブランクへの不安や、再就職の難しさを感じる方も多いのではないでしょうか。

第2回は(第1回はこちら)、3度の海外赴任帯同を経験しながら、アメリカで実務経験を積み、帰国後フルタイムで再就職を果たしたMさんの事例をご紹介します。

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キャリアの原点:新卒時代に築いた基礎

Mさんは大学で英文科を卒業後、日系大手金融機関に新卒入社しました。秘書室に配属され、海外からの来客対応や英文メール対応など、英語を活用する業務を担当していました。

高い業務負荷とスピード感が求められる環境の中で培ったビジネススキルと実務経験は、その後のキャリア再開を支える確かな土台となります。新卒時代の経験が、自身の「働ける」という感覚を維持する土台となっていました。

1回目・2回目の海外赴任帯同──長期化するブランク

最初の赴任先はアメリカで、約1年半の帯同生活を送りました。帰国後は派遣として再び同じ金融機関で勤務しますが、妊娠・出産を経て仕事から離れることになります。

その後、東南アジアへの2回目の赴任にも帯同し、約2年半は専業主婦として過ごしました。帰国後もお子さんが未就学だったことから、さらに数年間は家庭中心の生活が続きます。

結果として、キャリアのブランクは長期化しました。再び働きたい気持ちはありながらも、具体的な再開時期や方法が定まらない状態が続いていました。

3回目の海外赴任──小さな仕事からの再スタート

2021年、3回目の海外赴任で再びアメリカへ。

子どもの成長とともに、再就職への意識は徐々に高まっていました。一方で、長期ブランクに対する不安も大きく、まずは実務経験を積むことが必要だと考えるようになります。

そのタイミングで、配偶者の知人が経営する会社から翻訳業務の依頼がありました。日英・英日のレポート翻訳や業界リサーチが主な業務で、1日平均3時間程度、納期ベースで進める業務内容でした。

Mさんの家庭状況を踏まえた柔軟な業務設計であったこともあり、キャリア再開の第一歩として挑戦することを決断。この経験は、ブランク期間から「就業期間」に移行し、実務経験を積み上げる重要な転機となりました。

新たなキャリアの開拓──貿易事務への挑戦

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翻訳業務と並行して、Mさんは日系の派遣会社にも登録。紹介されたのは、メーカーでのフルリモートの貿易事務職でした。アメリカ代理店の窓口として、受注から日本への発注、在庫管理までを一貫して担当するポジションで、英語と日本語を日常的に使用する業務です。

貿易事務の実務経験はありませんでしたが、勤務形態や待遇よりもまずは「実務を積むこと」を優先。英語面接に備えて想定問答を準備し、繰り返し練習を重ねた結果、複数候補者の中からの採用に至ります。

このポジションで貿易事務の一連の業務フローを経験できたことが、帰国後の就職活動における決定的な強みとなります。

TOEIC900点取得──資格という後押し

実務経験の積み上げと並行し、日本での再就職を見据えてTOEICを受験。複数回の受験を経て900点を取得しました。高得点が必須条件ではなかったものの、客観的な英語力の指標として評価材料となり、採用担当者の目に留まりやすくなったと考えられます。また、資格取得は自身の自信の回復にもつながりました。

日本へ本帰国──4ヶ月でフルタイム復帰

帰国後、日本の人材エージェントに改めて登録し、日本での再就職を目指しました。エージェントからは年齢を踏まえた現実的なアドバイスもあり、経験のある秘書職と貿易事務職の選択肢が提示されましたが、より専門性を深められる貿易事務に絞って1社に応募。結果として、帰国から4ヶ月後にフルタイムでの再就職を実現しました。

面接では資格よりも実務内容が重視されました。貿易条件の理解、インボイス発行のタイミング、担当範囲の具体性など、実務レベルでの理解度が問われました。会社が変わっても貿易事務の基本フローは共通しており、アメリカでの経験はそのまま評価対象となりました。実務経験が“汎用スキル”として活きる結果となったのです。

現在Mさんは、アメリカで培った知識と経験を活かしながら、日本でキャリアを着実に積み重ねています。

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帯同経験から得た3つの示唆

Mさんの歩みからは、次の3点が示唆として浮かび上がります。

1. 家族との意思の共有が重要

帯同中の再就職には家族の理解と協力が不可欠です。再開したい時期や働き方の希望を共有しておくことが、機会創出につながります。

2. 実務経験は何よりも強い

派遣やフルタイムといった勤務形態にこだわるよりも、まずは実務経験を積むことが帰国後の選択肢を広げます。条件よりも「経験を積む」ことを優先した判断が、結果として功を奏しました。

3. 過去のキャリアを大切にする

新卒時代を含むこれまでの経験は重要な資産となります。ブランクがあっても、積み上げてきたスキルは評価対象になります。

おわりに──帯同期間は「再設計」の時間

海外赴任帯同は、不安や葛藤を伴う選択です。しかし行動次第では、キャリアの空白ではなく、将来に向けた再設計の期間にすることができます。

小さな仕事からでも実務を積み上げること。その積み重ねが、帰国後の選択肢を広げる確かな土台になります。

iiicareerでは、海外赴任帯同経験者やブランクのある方、
日英バイリンガルのキャリア支援を行っています。

✍️ 筆者プロフィール
Maiko Abe・阿部 麻衣子
Market Consultant・マーケットコンサルタント

iiicareer・interesse international inc. にて、リクルーティングに関するリサーチを中心に、コンサルティングやSEOを含む採用関連業務を担当。DC/NY/ヒューストンエリアを中心に人材支援に携わっている。

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