[激変し続ける米国労働市場] 3. 米国の日本人留学生年度別推移統計
当社で独自開発した人材紹介・派遣管理データベース「ジョブナビゲーター (Job Navigator)」では創業以来の各種統計を得ることができ、特に2004年以降全米展開以降のデータは年度別の同条件での比較検討が可能になっている。一人材会社の統計といえども全米の日本人留学生の求職状況の傾向を知る参考になると思われる。「アメリカの日本人留学生」に関する統計も調べてみると、想像していた以上の驚きのデータが得られた。
全米拠点展開が完了 (当時20拠点) した2005年の日本人新卒就職希望者、プラクティカルトレーニングビザ (OPT) 保持者はその数が最大で、年間登録者数は570人。2004年から2008年までの5年間は常に毎年350人以上の登録が続いていており、この時期がピークとなった。(OPT から就職が決まり、就労ビザ情報を変更した登録者は含まず)
リーマンショック以後の極端な就職難に陥った2009年の登録者は一気に214人に減少。その後は連続して減少し続け、コロナ前の2019年〜2022年ではついに最盛期の5%未満 (30人未満) となった。
本来、OPT 保持者は就職が決まると H-1B、そしてグリーンカードへ移行していく。OPT 保持者がこのように減少すると、グリーンカード保持者となる求職者も著しく減少する。日本国内の「過疎化・少子高齢化」と酷似していると言えるだろう。今では H-1B 取得の難しさから、留学はしたもののアメリカ国内での就職を諦め、最初から日本国内で就職活動をする者も増えた。また、1990年代から所得が増えない日本の一般家庭の実情からアメリカよりも、学費の安い国を選んで留学していることの影響もあるかもしれない。
そういった状況で、日本的な理解を必要とするポジションを日本人から親日派・知日派のアメリカ人採用に切り替えていくことは米国内の事業運営に重要な判断となるだろう。また、STEM の対象職種はここ数年大幅に増え、STEM の学生に限って3年間有効の OPT ビザの申請も可能になった。
一方でこの不可逆的な傾向に対して全米の日系団体が官民一体となり、いかにしてアメリカ在住の日本人人口を増やすことができるか、真剣に考える必要性を痛感している。
執筆
インテレッセインターナショナルグループ
社長 藤原昌人
1994年1月に人材会社の駐在員としてニューヨークに赴任。1996年の帰任命令に反して独立・創業。現在、全米11拠点、そして2022年から日本法人を設立し、日米双方で人材ビジネスを展開する。30年に及ぶ人材ビジネスでの知識と経験でビジネスに有益な情報を届ける。