[激変し続ける米国労働市場] 4. 米国各州の企業誘致政策

2023年、10月12日〜13日に東京で開催された日本・米国南東部会 (Japan-U.S. Southeast Association) に参加した。この会合は、日米経済協議会 (Japan-U.S. Business Council) の地域部会として日米交互に毎年開催されており、2023年度で第45回目となった。この他に日米・中西部会 (Japan-U.S. Midwest Association) があり、そちらは53回目の開催となった。

日本・米国南東部会は日本と米国南東部7州 (ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、フロリダ州、ジョージア州、テネシー州、アラバマ州、ミシシッピ州) の相互交流を図る組織であるが、米国側7州の目的は主に国際貿易と企業誘致である。米国の各州政府は日本の都道府県とは大きく異なる活動をしている。例えば、ジョージア州の米国以外の事務所は12の国と地域に広がる (ブラジル、カナダ、チリ、中国、コロンビア、ヨーロッパ、イスラエル、日本、韓国、メキシコ、ペルー、イギリス、アイルランド)。ジョージア州政府の資料によると、ジョージア州内の外資系企業総数は4400社、雇用者数は25万8000人になるという。南東部の他州においても同様であり、各州との競争と協業を繰り返している。ここで興味深いのは、日本側がハイテク産業の進出や投資額を最初に上げるのに対して、南東部の各州では、まず雇用者数の増加を上げている。雇用には様々な産業・職種・レベルがある。ジョージア州政府の企業誘致担当者の一人からは、進出企業への各種の優遇措置を配慮するだけではなく、企業誘致 (工場) がほぼ決まると地元の学校 (高校) と連携し、その工場で働ける人材育成と技能実習などを実施するという。熟練の企業誘致担当者ともなるとその部門で15年を越すことは当然という。日本は政府主導での地方創生のようだが、親鳥から餌が運ばれてくるのを待つ雛から、自ら餌を探しに羽ばたいていくような存在へと成長していくことが重要だ。


執筆
インテレッセインターナショナルグループ
社長 藤原昌人
1994年1月に人材会社の駐在員としてニューヨークに赴任。1996年の帰任命令に反して独立・創業。現在、全米11拠点、そして2022年から日本法人を設立し、日米双方で人材ビジネスを展開する。30年に及ぶ人材ビジネスでの知識と経験でビジネスに有益な情報を届ける。