[激変し続ける米国労働市場] 7. HR のアウトソーシング- PEO と EOR

すでに多くの方々がご存知と思われる PEO と EOR。どちらも、企業がグローバルな人材を管理するための第三者の HR アウトソーシングプロバイダーを指す。では PEO (Professional Employment Organization) と EOR (Employment Of Record) はどのように違うのだろう。

PEO は日本語では「習熟作業者派遣」と訳されることが多いが、この表現で実態を正しく把握できるかどうかは疑わしい。直訳すると「専門家雇用組織」とでもなるであろうが、これも理解しにくい。当社では最もわかりやすく「雇用代行サービス」と表現している。使用する派遣先企業では指揮命令責任、PEO を提供する企業は雇用責任を持ち、両者が派遣社員に対して共同雇用責任を持つのは一般の人材派遣と同じである。一般の人材派遣とどのように違うかというと、PEO は長期間雇用を対象として、顧客企業の正社員のベネフィットと同様に様々なベネフィットが用意されている。通常の給与支払い、各種雇用に関する税金の支払い、失業保険、労災保険、401K 加入資格、有給休暇、採用に関する各種業務などがある。数年に及ぶ顧客企業のプロジェクトなどには適したサービスであろう。日本ではアメリカほど自由度のある利用は法律によりできないようだが、それでも日本版 PEO なるものがあるらしい。

これに対して EOR。基本的な内容は PEO と同様であるが、雇用地の違いがある。指揮命令する顧客企業が日本、雇用がアメリカになる場合は EOR となる。具体的にはアメリカに進出まもなく、現地法人の体制が整わない初期段階や、主たるビジネスは終了し、現地法人を精算したあとでも引き続きメンテナンスが必要な場合などには大変に有益なサービスである。指揮命令する企業がアメリカにあり、日本で雇用する場合は日本の労働者派遣事業の資格を持つ会社がサービスを提供できるようだ。


執筆
インテレッセインターナショナルグループ
社長 藤原昌人
1994年1月に人材会社の駐在員としてニューヨークに赴任。1996年の帰任命令に反して独立・創業。現在、全米11拠点、そして2022年から日本法人を設立し、日米双方で人材ビジネスを展開する。30年に及ぶ人材ビジネスでの知識と経験でビジネスに有益な情報を届ける。