[激変し続ける米国労働市場] 8. 駐在員の米国内転職
近年、日本帰国をせずに米国内転職を希望する駐在員が増えているようだ。
現地法人ということで、日本本社内の誠に細やかな人間関係・上下関係を必要とせず (全員がそう感じているわけではない)、自身の責任・権限の範囲で仕事に集中できたり、アメリカ人社員と人間味のあふれる交わり、また、家族がアメリカの生活に慣れ、子どもたちは日本の子供社会のしがらみに左右されず、より自主的・自由・対等に学習 (特に英語学習) での新しい体験ができることなど、その理由は様々であろう。
僕自身はドイツの大学に留学経験があり、友人のドイツ人米国駐在員から「ドイツ本社に復帰するか、永住権をサポートするのでアメリカ現地法人でそのまま残るかは君の判断に任せると言われた。昌人はどう思うか?」と相談を持ちかけられたことがある。彼が務めるドイツ企業では本社、或いは米国子会社で勤務しようが社員には変わりがなく、彼の人生の選択肢に任せるという判断なのであろう。
日系企業ではグリーンカードをサポートすると転職されてしまうのではないかという、極めて小さな人間・会社の判断なのか、自社社員に対する疑心暗鬼と不信感が現れているようにも思われる。米国内での転職では駐在員手当はなくなり、現地社員としての給与・待遇で家族を養わなければならない訳で、米国に残る場合の覚悟はできているはずだ (これを理解していない駐在員も見受けられるが)。永住権の申請と現地子会社での再雇用を認めることで、優秀な人材を同一企業グループ内に留めることができる。職業・企業選択の自由は従業員・個人にあり、もしかしたらいつかは転職されるかもしれないが、良好な関係を継続することで日本語・英語バイリンガル人材が欠乏するアメリカにおいて、人材確保ができる手段の一つであると考える。
執筆
インテレッセインターナショナルグループ
社長 藤原昌人
1994年1月に人材会社の駐在員としてニューヨークに赴任。1996年の帰任命令に反して独立・創業。現在、全米11拠点、そして2022年から日本法人を設立し、日米双方で人材ビジネスを展開する。30年に及ぶ人材ビジネスでの知識と経験でビジネスに有益な情報を届ける。