[激変し続ける米国労働市場] 11. ニューヨーク・ニュージャージーの韓国社会

このところの在米日本人社会の著しい縮小(人口減少、高齢化などなど)の中で、日系顧客企業が求める日本語・英語バイリンガル人材と出会うのは誠に厳しい現状となっている。ある日系人材会社は駐在員の帯同者向けのイベントを開催し、求職者の登録を促進していた。ついにここまで来たかという感がある。

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そういう当社も何か方法はないかと思案し、ニューヨーク・ニュージャージー在住の公称25万人の韓国人社会向けに求人広告を出してみることにした。韓国人社会に日本に在住経験のある人々もいるであろうと言う推測からの判断である。広告を出す前に韓国系スーパーマーケットに山積みとなっている多数の、そして誠に分厚い韓国語新聞の各氏を片っ端から調べてみた(このような分厚さは日本語新聞ではコロナ禍よりもはるか以前にあったように記憶する。米国における民族人口の勢いの違いを見せつけられる)。

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NYの某日系紙と同様に広告ばかりの新聞である。圧倒的に多い不動産関連とレストランに加えて、自動車修理、保険会社、弁護士など。個人事業主、あるいはエージェントの類ばかりである。ところがどの新聞でも人材会社の広告が見当たらない。求人・求職のコーナーが有る新聞を調べてみたが、載っている職種は(寿司)シェフ、庭師、ネイリスト、鍼師、マッサージ師などその殆どが職人ポジション。

日本語新聞のような会社勤めのポジションは見当たらなかったのいで、逆にチャンスと考え、新聞の1/4サイズの大きめの当社広告を出して見ることにした。特に物流、食品卸、カスターマーサビスなどの日本語・英語(&韓国語)の求人を対象としたものだ。しかし、期待とは裏腹に結果は芳しくなかった。

アメリカの韓国人社会は一握りの超エリート社会の韓国系駐在員社会と韓国系移民社会との間には極めて大きな隔たりがあり、一線を画していると聞いたことがある。日本語のできる人材はどちらの層にもいないのだろうか?

これに対して日本の場合は実に多数の日系企業が米国進出しており、多くの在留日本人がこれらの企業に就職できる機会があり、超エリートと一般日本人社会の隔たりは少なく、居住地域の区別もない。実にフラットな社会だ。

アメリカの日系企業が必要とするバイリンガル人材は果たしているのか、ないのか? 

引き続きバイリンガルの方々の登録を懇願しつつ。


執筆
インテレッセインターナショナルグループ
社長 藤原昌人
1994年1月に人材会社の駐在員としてニューヨークに赴任。1996年の帰任命令に反して独立・創業。現在、全米11拠点、そして2022年から日本法人を設立し、日米双方で人材ビジネスを展開する。30年に及ぶ人材ビジネスでの知識と経験でビジネスに有益な情報を届ける。