[大蔵弁護士による米国ビザ情報] 飲酒運転のビザへの影響
年末も近くなり、感謝祭、忘年会また新年会とアルコールが出回る行事も多くなってきました。アメリカは飲酒運転に対して大変厳しく取り締まっている国なので、“ついうっかり” ということにならないよう、アルコールとビザの関連について説明します。
日本では自動販売機でアルコールが販売されたり、道端で酔っ払いを目にすることも珍しくはありませんが、アメリカでは車内或は公共の場でふたの開いたビールをもっているだけでも逮捕されるところもあります。レストランでも酔っ払いに対して無制限に酒を提供することもできません。酔っ払いが後に飲酒運転や人身障害などの事故を起こした場合、酔っ払っていると知りつつ酒を提供した者が責任を問われることもあります。
2015年11月より、米国内にて飲酒運転 (DUI=driving under the influence) で逮捕されたら、各国の米国大使館か米国領事館から本人にビザ取消通知書が届くようになりました。ビザを取り消されるのに有罪判決は必要ではなく、5年以内にDUIの逮捕歴があればこの対象になります。ビザ・スタンプの取り消しは次回出国時に効力を発するので、一旦出国したら再度入国する際に既存のビザ・スタンプは使えなくなります。出国をしたら、オンライン・ビザ申請用紙DS160に飲酒運転による逮捕情報を開示し、裁判書類を添付し、再度ビザの申請をしなおす必要があります。尚、国外に出ている間にビザ取消通知が届いた場合、米国に入国できなくなる可能性があるので、飲酒運転の逮捕歴のある人は、米国を出国する前に人事に連絡をとり、国外でのビザの再申請に関して事前に準備する必要があるでしょう。
飲酒運転で逮捕された場合、初犯であれば、過去の逮捕歴、違法物所持、第3者に対する人身障害、など重度の追加違反行為がない限りは、ほとんどの州では軽犯罪の判決が言い渡されます。軽犯罪だと、判決文を全うすれば、基本的には滞在資格に影響したり、将来のビザ申請を妨げるものではありません。しかし、アメリカで犯罪歴があると将来ESTA (ビザ・ウエイバー) を使って入国することはできなくなるので注意が必要です。ESTAが使えない場合、観光や短期出張目的であればB1/B2の短期商用・観光ビザを申請することができます。
犯罪歴や逮捕歴がある人は、ビザ申請時に米国大使館や米国領事館に裁判記録を一式提出します。FBIのバックグランドチェックをされるので、ビザ申請は通常よりも長くかかることがあります。また、在外公館は、いままで過去5年以内に飲酒運転の逮捕歴がある人、もしくは過去10年間に2回以上飲酒運転の逮捕歴がある人、またアルコール依存症だと思われる短期ビザ申請者に対しては、大使館指定医師からの健康診断書の取得を要請することがあります。診断の結果、本人が自分自身や社会に脅威や危害を加えるような障害がない、もしくはアルコール依存症ではないと判断されれば、ビザは発行されます。しかしながら、無事にビザが発行されても、アメリカに入国する際に再度過去の犯罪歴や逮捕歴について審査されます。米国市民以外のビザ保持者は永住権保持者も含め、入国時に問題があることが発覚すれば第2次審査室につれていかれ、過去の違反行為に関する書類の提示を求められることがあります。従って、過去に違反歴がある人は入国時の質問に備えて警察の逮捕記録や裁判所の判決記録を証拠として持参した方がよいでしょう。いずれにしろ、“飲んだら運転しない!”を心がけましょう。
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このコラムは、Taylor English Duma法律事務所の大蔵昌枝弁護士によって執筆されています。大蔵弁護士へのお問い合せは下記の情報を参照下さい。
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